ミは未来のミの映画専門家レビュー一覧

ミは未来のミ

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2019 SKIPシティアワードを受賞した中編青春ドラマ。高校三年生の上村は秋になっても進路を決めかね、焦りを感じつつもダラダラと過ごしていた。そんな中親友・高木が交通事故に遭い、上村はある約束を果たすため仲間を集める。監督は、ビジュアルアーツ専門学校大阪出身、30歳から映画制作をはじめ、「予定は未定」でSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2018国内コンペティション(短編部門)優秀作品賞を受賞した磯部鉄平。本作は自身の体験を基にしている。主演は、「赤色彗星倶楽部」の櫻井保幸。映文連アワード2019準グランプリ、第12回オホーツク網走フィルムフェスティバル中・長編部門ニポネ賞(準グランプリ)、第5回賢島映画祭主演男優賞(櫻井保幸)受賞。
  • フリーライター

    須永貴子

    交通事故で亡くなった仲間の名誉を守るために、男子高校生4人が挑むミッションがくだらないからこそ、証明される友情の純度が高い。大人が用意した葬儀ではなく、彼らなりの弔いの儀として、故人のタバコを回し飲みしていちいちむせる4人に胸が熱くなる。喧嘩も反抗もクサいセリフもなく、優しい男子5人の誰も傷つけないやりとりで魅了する、令和時代の青春映画。それを支えるのは、演出、役者の演技、撮影と録音など、各部の高いクオリティだ。ヒロインも可愛い!

  • 脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授

    山田耕大

    主人公は変な髪型の高校生。変な奴なんだろうと思ったら、しごくまっとうで平凡そのものだ。ただ、何かが足りないと自分でも思っている。クラスで唯一人進路を決められないでいるが、気のいい友達も数人いる。その友達もみんな彼と似たり寄ったりだ。偉業を成し遂げそうな気配は微塵もなく、暇にあかして自分たちの形見は何だろうなどと考えたりしていると、中の一人が本当に死んでしまう。だが、主人公の呼びかけで、彼らは彼らなりの「偉業」を成し遂げるのだ。中々の映画ですぞ。

  • 映画評論家

    吉田広明

    世界や宇宙の終わりは容易にイメージできるのに、今の時間が無限に続くように思えて、自分の将来とか身近な未来は想像しにくいといういかにも思春期的な逆説の中にいる高3生が、親友の死によって直近の未来を考えさせられる。その年代らしいリアルを捉えていて好感は持てるのだが、では主人公が自身の未来という厄介なものをどう受け止め、どう変わったのか変わらなかったのか、という難しい描写をオミットしているのが残念である。真に描くべきはそこだったのではないか。

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