日本人の忘れもの フィリピンと中国の残留邦人の映画専門家レビュー一覧

日本人の忘れもの フィリピンと中国の残留邦人

太平洋戦争でフィリピンや中国に取り残された残留者たちの戦後の歩みを追うドキュメンタリー。残留者たちの辿った道や現状、彼らを救おうとする市民たちの活動を映す。中国残留孤児やフィリピン残留日系2世の日本国籍取得を支援する弁護士・河合弘之が企画。監督は、映文連アワード2012部門優秀賞(コーポレート・コミュニケーション部門)を獲得したキヤノン総合企業紹介映像『伝えあい、わかちあい、響きあうために』をはじめ、テレビCMや企業プロモーションなどの映像広告を手がける小原浩靖。元NHKアナウンサーで、千葉市男女共同参画センター名誉館長、NPO日本朗読文化協会名誉会長などを務める加賀美幸子がナレーションを担当。
  • フリーライター

    須永貴子

    フィリピンと日本、どちらの国籍もないままフィリピンにひっそりと暮らす人を探し出し、インタビューでそのルーツをたどるシーンから始まる本作。ミステリーのような要素で観客の興味を引き、残留邦人の問題を中国へと広げ、無策なまま問題の「消滅」を待つ日本政府への痛烈な批判に帰結する構成の妙。残留邦人の国籍回復に尽力する人々だけでなく、独自取材映像にこだわる制作陣の本気にも敬服する。そして、現在進行形で「棄民」を作り出す現政権下での生き方を考えさせられる。

  • 脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授

    山田耕大

    「日本人は世界で唯一の単一民族である」などと主張して、声高に他国人を蔑視している人たちが令和のこの日本にまだいるらしい。中国残留孤児は中国に置き去りにはしたが日本の父と母から生まれたから日本人だが、フィリピン残留孤児は日本の父とフィリピンの母から生まれた混血だから日本人ではないと言いたいらしい。待遇に著しい格差がある。国民を守らずして何の国家なのか。この恥ずかしさを日本は世界にさらけ出しているのだ。ああ、やるせない。

  • 映画評論家

    吉田広明

    中国残留孤児は知っていたが、フィリピンについては不勉強で知らなかった。敗戦後孤児を救わず、帰国させる措置を取らず、帰ってきても生活支援せず、の三重の「棄民」への孤児たちの戦い。特にフィリピンでは日本人と分かると報復されるので証明書を焼き、国籍回復が困難。フィリピン政府は彼らを無国籍認定して日本政府に行動を促すが、日本政府はそれに応えようとせず、亡くなるのを待って問題消滅を図っている。弱い民などいつでも捨てる「美しい国」への「政策形成映画」。

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