凪の海の映画専門家レビュー一覧

凪の海

MVなどを手がけてきた映像ディレクターの早川大介が、故郷である愛媛県宇和島を舞台に自主制作した人間ドラマ。閉鎖的な故郷を飛び出したもののうだつが上がらない日々を過ごす圭介の元に、漁に出たまま行方不明になっている兄の葬式をするとの知らせが入る。ミュージシャンになるはずが大した成果をあげられずにいる圭介を「風に濡れた女」の永岡佑が演じるほか、「ハッピーウエディング」の小園優、舞台を中心に活動する湯澤俊典、「まんが島」の柳英里紗、劇団『椿組』の主宰・外波山文明らが出演。
  • フリーライター

    須永貴子

    ロケ地の特徴を最大限に生かした人物の動かし方に、この土地で撮る意味を感じた。兄の葬式のために数年ぶりに帰省した主人公を起点にした、説明しすぎないやりとりから、登場人物の過去と現在が次第に浮かび上がる構成も、彼らへの興味を牽引する。ところが、中盤で明らかになる主人公が抱える問題のナイーヴさと、「女性=海」というイメージを背負わせた強引な幕引きに?然。ヒロインをミステリアスに仕立てたいのだろうが、それ以前に、主人公が彼女を好きな理由が謎。

  • 脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授

    山田耕大

    三方を山に囲まれた、朝陽が差さない海沿いの町。そういう舞台と聞いただけで、もう何かの人間ドラマを予感させる。優秀な兄が死に、葬式のために故郷に帰ってくるダメな弟。兄の死後も淡々と漁師を続ける父親、兄から精神的に逃れられない元兄嫁、両親を火事で亡くした幼馴染の少女は足が悪く、その兄に呪縛されながら生きている。みな死に囚われている。兄は自殺だった。そして弟と愛を交わした少女も……。理由は定かにはしないが、ありありとそれが心に浮かぶのだ。優れた映画だ。

  • 映画評論家

    吉田広明

    監督はPVを撮ってきた人というが、撮影、照明、録音などの技術においても、主人公の兄の死の謎を核として、徐々に人間関係や過去を明るみに出してゆく脚本の構成においても、さすがに映像で食ってきただけのことはあるクオリティ。ただし、主人公の兄の死の原因もあまり明確ではないし、そんなものはどうでもよくなるほど主人公の現在のドラマが濃いわけでもないので、何かいわくありげな人物たちを雰囲気で処理しているかに見えなくもない。脚本をもう少し掘り下げて欲しかった。

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