レイニーデイ・イン・ニューヨークの映画専門家レビュー一覧

レイニーデイ・イン・ニューヨーク

マンハッタンを舞台に、運命のいたずらに翻弄される男女の姿を見つめるウディ・アレン監督作。生粋のニューヨーカーであるギャツビーとアリゾナ出身の無垢なガールフレンド、アシュレーの大学生カップルは、ロマンチックな週末を過ごそうとしていたのだが……。出演は「君の名前で僕を呼んで」のティモシー・シャラメ、「マレフィセント」シリーズのエル・ファニング、「スプリング・ブレイカーズ」のセレーナ・ゴメス、「キング・アーサー」のジュード・ロウ。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    こんなにもウディ・アレン的な映画があるのか。原点回帰。自分の映画をブラッシュアップしてみせた。「現実は夢を諦めた人たちの世界」という台詞が登場するが、この映画に出てくる世界は決して現実ではない。夢や恋に破れ、失業しても輝き続けている。まるで縫い合わされたような誰かの部屋の中のNY。NYは何も変わらず微動だにしない。デュラス映画の編集ドミニク・オヴレーのアレン論を思い出す。巨匠ヴィットリオ・ストラーロ撮影のなんと美しいことか。それだけで満足。

  • フリーライター

    藤木TDC

    小粋なラブコメだが異様でもあり、観賞中、脳裏にロールシャッハテストのどす黒いシミが広がる。若い娘たちの誘惑と酒や博打にまみれた甘美な都会の一夜は84歳の瘋癲老人がチラシ裏に綴った妄想とも、確信犯的に示す現代人の倫理の踏み絵ともとれる。監督は意地悪く絵本を開き「君たちも正直こういうの好きだろ」と悪魔の囁き。黒人もアジア系も失業者もいないロマンチックでノーブルなニューヨークに重なる影は性的シンボルか排除された人々の嘔吐か。観客の認識が試される。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    ファニングの役柄が軽薄で、若さと美貌を積極的に活用し世渡りしていく、恐ろしいほど内面を描かれない少女になっていてアレンの女性観かなと。昔の作品と比べ複雑さを失った女キャラが、些末にこだわらない老人力を物語る。作品自体はいままで通りのアレンのテイストに貫かれていて、クリエイターたちの雑然とした集いのシーンなど大人の魅力に溢れる。ただ、現在慎ましく暮らしていても、若い女が好きというアレンのメッセージは昔から気持ち悪かったし、本作でも変わらない。

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