ドキュメンタリー沖縄戦 知られざる悲しみの記憶の映画専門家レビュー一覧

ドキュメンタリー沖縄戦 知られざる悲しみの記憶

太平洋戦争末期、日本で唯一の地上戦となった沖縄。当時の体験者や専門家の証言、米軍が撮影した記録フィルムなどから、その実態を明らかにするドキュメンタリー。20万656人もの戦死者を出し、県民の3人に1人が死亡したとも言われる戦闘の真実とは。ナレーションを務めるのは、「ダンスウィズミー」の宝田明、「一粒の麦 荻野吟子の生涯」の斉藤とも子。監督は「朝日のあたる家」の太田隆文。
  • フリーライター

    須永貴子

    「ハクソー・リッジ」の前田高地以外にも、数多ある太平洋戦争中の沖縄に描かれた地獄絵図を捕捉していく。試みも、メッセージも、資料としても意義深く、見るべき作品であることに間違いはない。しかし、戦争体験者の証言が録音の問題か聞き取りづらい上、みなさん長尺なので根気が必要。貴重な体験談をより多くの人に伝えるための、編集やテロップでの工夫がほしかった。そのテロップの解像度が低く、「語り」は感情移入が過剰。トータルで、言葉周りの処理に改善の余地あり。

  • 脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授

    山田耕大

    沖縄戦の悲惨、残虐はアウシュヴィッツに匹敵すると思われる。島崎藤村が校閲した『戦陣訓』、その「生きて虜囚の辱めを受けず」のせいで、どれだけの人々が集団自決で死んでいったのだろう。軍部が通告した「一億玉砕」? 国民が全部玉砕したら、もう国ではない。倒錯しているとしか思えない。『戦陣訓』を声高に叫んでいた東條英機は、自決に失敗し、生きて辱めを受け、死刑を前に差し出されたワインを二杯飲んだという。人身御供にされた沖縄に改めて哀悼を!!

  • 映画評論家

    吉田広明

    これもまた国家「棄民」のあり様を描く。本土決戦への時間稼ぎ、捨て石に過ぎない沖縄。民間人男性をすべて徴兵、女子供には皇民化教育で「日本人」アイデンティティを内面化させる(それが集団自決ならぬ「強制死」を生む)。要するに沖縄は国民全員が戦争する「総力戦」の典型、日本本土のもしかしたらありえた姿であったわけだ。沖縄がそういう存在であったことは既知の範囲であり驚きは正直ないのと、感傷的な語りと音楽、記録映像をイメージとして使う手法に疑問はある。

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