ファヒム パリが見た奇跡の映画専門家レビュー一覧

ファヒム パリが見た奇跡

チェスチャンピオンを目指す政治難民の少年をめぐる実話を映画化。バングラデシュに暮らす天才チェス少年・ファヒムは、8歳の時に政治難民として父親と共に突如パリへ移住。言葉も分からず住む場所も定まらないなか、自由な未来を勝ち取るためチェス大会に挑む。ファヒムを演じるのは、本作が演技初挑戦で、自身もバングラデシュから政治亡命者の息子として逃れてきたというアサド・アーメッド。チェスコーチ役をフランスの名優ジェラール・ドパルデューが演じる。監督は俳優としても活躍するピエール=フランソワ・マルタン=ラヴァル。
  • 映画評論家

    小野寺系

    命の危険から祖国を脱出した不法移民という立場から、頭脳一つでチェスチャンピオンを目指す少年が主人公という設定、そして実話ベースというところで、応援せずにはいられない。可愛げある父親や、ドパルデュー含めチェス教室の個性的な面々、ライバルの憎たらしさ。そしてチェスの奥深さの片鱗と、それを主人公の成長に重ねる脚本の手腕。演出は大人しめで印象が薄いものの、それぞれの要素が上手く機能し、フランス政府への提言につながっていく構成も小気味良い良作といえる。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    亡命者と滞在国。快活な息子と、異国の暮らしに苦悩する父。厳しい(チェスの)指導者と、心優しいチェス教室の主宰者。終始、二項が二重奏を奏でながら展開する物語は安定感を醸し出し、主題の人権が浮かび上がる。フランスにおける亡命者の政治的保護の問題はG・ドパルデューとI・ナンティの、ベテランの実力俳優がそれぞれの存在感をもって主題に貢献する。人権はかの国だけの問題ではない。市民の声を[真摯]に受け止めた首相に希望が見える。オーソドックスで見心地が好い。

  • 映画監督、脚本家

    城定秀夫

    バングラデシュ人親子が自分と息子と同じくらいの歳だったこともあり、妙に感情移入してしまったし、彼らに対するフランス人たちの思いやりが綺麗ごと一辺倒ではないリアルな温かさなのが嬉しく、親子愛映画、社会派映画としては勿論、チェス映画としての面白さにもぬかりはないうえ、実話ベースのドラマチック展開に加えスパルタ先生や子供たちのキャラも魅力的に、その配置や動かし方も美しいとあっては、まるで名人のチェスのようだ……なんて、チェスはぜんぜん分かりませんが。

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