ドンテンタウンの映画専門家レビュー一覧
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フリーライター
須永貴子
前の住人が残していったカセットテープに吹き込まれた日記を聴いているうちに、スランプに陥っているシンガーソングライターの想像力が刺激されていく。パレットの上で異なる色の絵の具が溶け合うように、2人の人生が混ざり合う奇妙な展開に、困惑しつつも心が躍る。アロハシャツの使い方や、ラストシーンでの驚きのある配役からも、映画における「見せ方」の可能性を探る監督の遊び心が見てとれた。佐藤玲と笠松将が演じる男女が、団地の部屋にとてもチャーミングに存在する。
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脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授
山田耕大
世の中には、陽の目を見ない素晴らしい企画や脚本が五万とあるし、はち切れんばかりの思いを抱きながら、撮らせてもらえない監督も書かせてもらえないライターもいっぱいいる。そんな中でこういう映画が出てくると、つい涙が出る。「何悩んでんの? こうすればいいんじゃね?」てな感じで出来たんだろうか。映画になっているとは思えない。映画が侮辱されているとさえ思った。何も感じさせず、虚無感だけが胸の中に広がっていく。埋もれている才能の数々を思い、やはり僕は涙する。
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映画評論家
吉田広明
前住人が置いていったものの中にカセットテープの日記があり、それを聞いて彼の存在を感じているうち、彼が現実に現れる。今描かれるのが、テープで語られた過去なのか、ヒロインの想像なのか、そもそもそのカセットで語られる彼の物語もヒロインが働く喫茶店の常連劇作家が執筆中の話と同じと、現在と過去、現実と虚構が交じり合って、その不確かさは深刻にならず、ファンタジーとしてそつなくまとめられている。トンネル、団地などのロケーションもデザイン的に面白い。
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