グッバイ、リチャード!の映画専門家レビュー一覧
グッバイ、リチャード!
ジョニー・デップが余命半年の大学教授を演じたドラマ。美しい妻や娘と幸せな生活を送っていた大学教授のリチャードはある時、突然の余命宣告を受ける。さらに、妻から上司との不倫を告白された彼は、残りの人生を自分のために謳歌しようと決心するが……。共演は「ゾンビランド:ダブルタップ」のゾーイ・ドゥイッチ、「ワンダーウーマン」のダニー・ヒューストン。
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映画評論家
小野寺系
ジョニー・デップの奔放なイメージを使いながら、ときに倫理観から逸脱する描写をすることで、余命ものに痛快な刺激を与えようとする試みは面白い。だが、ここで表現される解放が、名前も知らない相手との行きずりの性行為であったり、フェミニズムに傾倒する女子学生の思想を否定し改心させる行為だというのは、老年・中年男性の身勝手で保守的な思想の助長に他ならない。このような幼い精神の大人が、いまむしろ体制側になっているというのが、現代の悲劇ではなかっただろうか。
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映画評論家
きさらぎ尚
余命宣告された大学教授の役柄なので、ハサミ男や白塗りメイク、あるいはエキセントリックなまでにキャラの立ったJ・デップを見慣れた身には、序盤はちょっぴり拍子抜けの感。が、自分の余命を知った彼がしがらみから解放されて過激な言動にはしる後半からは、本来の持ち味が出ている。お涙頂戴の難病ものでなく、人生を考察させるエピソードが面白い。特に大切にしている妻と娘について、実は彼は何ら理解してなかったという皮肉の効いたユーモアを評価したい。旅は犬連れ……。
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映画監督、脚本家
城定秀夫
シーン1、カット1で何の脈絡もなくいきなり余命宣告されるジョニー・デップからはじまるこの映画、観ている我々は主人公が自分だったらどうするだろうと考えざるを得ない作りになっており、序盤は皮肉屋の大学教授と問題だらけの家庭を喜劇調に描くことで油断させ、中盤以降、気が付けばいつの間にか死神が片足を?んでいるという狡猾さを発揮しながらも、紆余曲折の末、主人公が導きだした死生観は極めて凡庸なものであり、凡庸であるがゆえに逃げ場がなく、リアルで、恐ろしい。
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