マティアス&マキシムの映画専門家レビュー一覧

マティアス&マキシム

「Mommy マミー」のグザヴィエ・ドラン監督による自身初となる青春ラブストーリー。30歳で幼馴染のマティアスとマキシムは、偶然のキスをきっかけに互いの気持ちに気づき始める。友情が壊れることを恐れるマキシムは、想いを告げずに旅立とうとする。ドランが6年ぶりに自身の作品に出演したほか、ガブリエル・ダルメイダ・フレイタス、ピア・リュック・ファンク、「マレフィセント2」のハリス・ディキンソン、「Mommy マミー」のアンヌ・ドルヴァルが出演。第72回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作品。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    前作「ジョン・F・ドノヴァンの死と生」で一区切りついた感の、アンファンテリブルと言われたドラン8番目の作品。デビューから特殊でスペシャルな人物を描き続けてきたが、今回は市井の人間を照射することに与してみた。しかしあくまでもマージナルな存在。センス溢れるスタイリッシュな映像は影を潜め、等身大の生身の人間をリアルに丁寧に描いてみせた。これから映画監督的には正念場突入か。そろそろ苦悩の中のドラン版「8 ?」が見られる日も近いのかもしれない。

  • フリーライター

    藤木TDC

    つまらない原因は題材が男の同性愛だからでは断じてなく、物語の最終地点が恋愛感情の告白というちっぽけな行為だからだ。二人は相思相愛の気配だし、関係を阻害する物理的障壁もないから、さっさと告って重なっちゃえばハッピーエンドだ。それをしないもどかしさの間を埋める演出が若者のやかましい飲み会や映像・音楽の小洒落たセンスの披露で、そこに乗れるか否かが評価を分つ。趣味性に左右される要素が強い映画。私はこの監督のセンスや価値観には共感できなかった。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    いわばドラン版「君の名前で僕を呼んで」なのだが、何気ない休暇の描写とともに恋愛が展開する「君の名前で~」に対し、ドランの新作は恋がなかなか実らない中で日常を描く。じつは、後者は圧倒的にアプローチが損だと思う。何も起こらない日常を演出して座持ちさせるには、並々ならぬ感情の濃密さが必要となる。そのため頻繁に、母子や友人との罵り合いという表現に頼ってしまっている。抑圧した恋心のストレス暴発を、藪から棒に人に絡むという設定にするのも簡単すぎる。

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