イサドラの子どもたちの映画専門家レビュー一覧

イサドラの子どもたち

    モダンダンスの始祖イサドラ・ダンカンが20世紀初頭に創作したダンス『母』と、4人の女性たちの出会いを追ったドキュメンタリー。フランスの俊英ダミアン・マニヴェルが、全く新しい試みで『母』の翻案に挑み、イサドラと子どもたちの物語を紡ぎ上げる。出演は「美しいひと」のアガト・ボニゼール、「キングス&クイーン」のエルザ・ウォリアストン。第72回ロカルノ国際映画祭で最優秀監督賞を受賞。
    • 映画評論家

      小野寺系

      在りし日のイサドラ・ダンカンに思いを馳せる4人の女性の姿を、3つのパートでドキュメンタリー風に追っていくという構成。そのかなりの部分が、思索に耽ったり資料に触れている地味な描写ばかりだ。しかしそこには、ものごとを真摯に考え抜くこと自体に神聖さが宿るという、作り手の熱い信念が通底している。逍遥しながら情報を咀嚼していく豊かな時間は、表現にとって必要不可欠で、それがなければ形骸的な事務作業に堕してしまうということをうったえているように感じられる。

    • 映画評論家

      きさらぎ尚

      チュニックを着て裸足で踊るダンスの祖、イサドラ・ダンカンが遺した創作ダンス『母』をモチーフにしたこの作品は、祈りに似ている。イサドラの自伝から、『母』の創作のきっかけを紐解き、4人の女性がそれぞれに痛みを表現する様は、世界に散らばっている痛みを吸い寄せて胸に抱き、苦しみを緩和するために静かに祈る母の姿。感情を肉体表現に乗せる努力を捉えたドキュメンタリー風であり、内部に含み持つ感情を呼び覚ます母親たちの物語とも見え、アイディアと周到な構成○。

    • 映画監督、脚本家

      城定秀夫

      イサドラ・ダンカンのダンスを継承しようとする者、あるいはその魂に触れ救われる者たちを多角的視点から覗き、通常の作劇ならクライマックスに置かれるであろうダンスシーンをフレームから外すにとどまらず、レッスンシーンですら決定的な具体を描かない手法によって、舞踏、ひいては芸術が持つ形而上的な何かが人から人へ伝播し、各々の精神に浄化作用をもたらしてゆくさまをこの上なくシンプルかつ美しく表現している、映画に娯楽を求める輩など切り捨て御免の気高きアート映画。

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