越年 Loversの映画専門家レビュー一覧
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フリーライター
須永貴子
台北から、自分に好意を寄せる男性のいるクアラルンプールへ。東京から、初恋の女性がいる故郷・山形へ。台湾のどこかから、母の遺品整理のために海辺の故郷へ。転地はドラマが生まれやすい上、ラジカセやネガフィルムなど郷愁を誘う仕掛けが満載で、作り手の策に警戒心が芽生える。3篇とも役者とロケーションがとてもチャーミングだが、それらに甘え過ぎていて、編集がかったるい。「こんな恋があってもいい」という惹句を借りるなら、「こんな映画があってもいい」けれど。
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脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授
山田耕大
岡本かの子の原作、台湾の女性監督というだけで凄く興味をそそられる。かの子はあの岡本太郎のお母さん。『老妓抄』は、何度も読もうとして未だに読めず、本棚に立てたままだ。台湾、日本、マレーシア。それぞれの恋愛模様が、それぞれの土地の景色と絶妙にマッチしていて、まるで一つの絵画のようでもある。熱情をうまく包み込むような静かなタッチ。ことさら技をひけらかさず、着実に映画を織り込んでいる。ある種の気品が感じられた。この監督は穏やかに勝利している。
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映画評論家
吉田広明
岡本かの子原作というが、岡本の中でも一番あっさりした寸劇程度の作品をあえて選んでオムニバス短篇集のタイトルにしていること自体がどこか取り違えているのではと危惧を抱かせる。日常のふとした細部から人間の業を引き出してくる岡本の凄みはかけらもなく、パステルカラーの淡い色彩の中で、すれ違っていた男女が、何らの葛藤もなく最終的には何となくうまくいくという能天気。文学と映画は別物ではあるのだが、わざわざ本の表紙まで映してこれでは岡本も浮かばれない。
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