マイ・バッハ 不屈のピアニストの映画専門家レビュー一覧

マイ・バッハ 不屈のピアニスト

実在のピアニスト、ジョアン・カルロス・マルティンスの半生を映画化。20歳でカーネギーホールでの演奏デビューを飾り、“20世紀最高のバッハの演奏家”として世界で活躍していたジョアン・カルロスは、不慮の事故で右手の3本の指に障害を抱えてしまう。監督は、「ジャングルの少女 タイナ2 みんなで守る森」のマウロ・リマ。
  • 映画評論家

    小野寺系

    実在の天才的なピアノ演奏家が障害を乗り越えていく伝記的な物語だが、自分自身の欲望にまかせた行動が不幸を招き才能を腐らせてしまうという解釈が感情移入を阻んでしまう。ならばチェット・ベイカーを題材とした映画「マイ・フーリッシュ・ハート」のような破滅的な内容にすれば良いのだが、本作の主人公は再起してしまうので、感情を揺り動かされるポイントを見つけづらい。意味を持たないエピソードの積み重ねが人生だとはいえ、あえて描くのなら何か統一した描き方が必要では。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    ブラジル人ピアニストの幼少期からデビュー、注目を集めた20代から困難に見舞われたたその後を過不足のないエピソードで繋いでいる。J・C・マルティンスその人の人物像はそこそこ描けているが、彼を取り巻く人物、例えば妻のキャラクター(と周辺の女性たち)に深みがないせいだろうか、物語はさらっとしてやや平板。C・イーストウッドが映画化を希望していたそうで、結果論だが彼のバージョンを見たい気がする。劇中の音源がすべてマルティンスの演奏。これに★ひとつ。

  • 映画監督、脚本家

    城定秀夫

    天才ピアニスト、マルティンスの音楽という魔物にとりつかれた狂気の人生を描いた本作、よくぞこれだけ詰め込んだと感心するほどに内容がギチギチに詰まっているうえ、全てマルティンス本人の演奏音源が使用されているという演奏シーンも観ごたえ聴きごたえ充分なのだが、演出は彼の精神状態や生命力に呼応しているが故に均質さに欠き、青年期の弾けるような面白さが最後まで続かず、物語が進むにつれ音楽家伝記モノ特有の落ち着いた雰囲気に寄っていくのが少々飽き足りなくもある。

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