あざみさんのこと 誰でもない恋人たちの風景 vol.2の映画専門家レビュー一覧

あざみさんのこと 誰でもない恋人たちの風景 vol.2

越川道夫が「愛の小さな歴史 誰でもない恋人たちの風景vol.1」に続き男女の性愛を描くシリーズ第2弾。17歳で家出し、年の離れたキタジマの恋人となったあざみ。だが、仕事優先のキタジマに寂しさを覚えた彼女の前に、不器用な青年ノダが現れる。出演は「ももいろそらを」の小篠恵奈、「SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者」の奥野瑛太。
  • フリーライター

    須永貴子

    元カレとのセックスシーンでは、ノイズのような奇怪な劇伴が徐々に大きくなり、二人の身心 のズレと、セックスという行為が他者から見るといかに滑稽であるかが浮き彫りになる。ある人物は、見知らぬ女の喘ぎ声を聞いて、自殺をするのがアホらしくなったと白状する。セックスを通して生と死を描く数多の映画に比べて、本作は主人公とセックスを美化しない視点が魅力。主人公に純粋な愛情をぶつける男を演じる奥野瑛太が、熱量派だと思っていたら、とんでもない技巧派になっていた。

  • 脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授

    山田耕大

    あざみさんは漂流している。どこに流されていくかもわからず、時々岩や流木にぶつかるみたいにセックスをする。シナリオワークブック『映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと』を書いたシド・フィールドは、「主人公には目的がなければならない」と言う。目的があるから行動し、それを阻むものが出てきてドラマが生まれる。あざみさんの目的はなんだろう。それがよくわからず、観る人の心も漂流する。ノダくんとの話に集約していれば傑作になったかも、とふと思った。

  • 映画評論家

    吉田広明

    あざみさんという名前にふさわしく、ザラザラした感じのヒロインの造形。年上の彼氏との間が、「二人でいるのに片思い」ですれ違い、鏡でしか視線が合わなかったり、逆に夢で彼の自殺を救ったら、実際に知らぬ間に留守電で救っていたり、すれ違っているような、いないような微妙な関係、これではもやもやしても仕様がない。しかしこの不透明感こそが生きているという感触であるように思われ、愚直に彼女を愛する男の登場によって事態を分かりやすくするのは若干惜しい気がする。

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