博士と狂人の映画専門家レビュー一覧

博士と狂人

世界最大の辞典“オックスフォード英語大辞典”誕生をめぐる実話をメル・ギブソンとショーン・ペン共演で映画化。貧しい家に生まれた学者マレーと、エリートながら精神を病んだ元軍医マイナーは、辞典づくりというロマンを共有し固い絆で結ばれていくが……。共演は「インビジブル 暗殺の旋律を弾く女」のナタリー・ドーマー、「おみおくりの作法」のエディ・マーサン。監督は、本作が長編デビューとなるP.B.シェムラン。
  • 映画評論家

    小野寺系

    辞書づくりの深淵をのぞきこむことができるのが、本作の最も興味深いところ。英単語には複数の源流があることは知っていたが、まさかこれほど複雑だとは。そして、以降の英語辞典づくりの基礎となる辞典の完成までにかけた歳月と信念は、完成までに15年をかけるという「舟を編む」が霞んでしまうくらいに凄まじいものだったと知る。ショーン・ペン演じる実在の殺人犯の葛藤については、罪状が重すぎて共感を阻害する部分があるものの、安易に良い人に描かなかったのは誠実だ。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    辞典編纂というアカデミックな題材とは、およそかけ離れた殺人事件、それも人違いによるものというエピソードで始まったこの映画、想像していたドラマを遙かに超える壮絶さでスリリングに展開する。編纂現場の博士側の言葉への向き合い方はもちろんだが、刑事犯精神病院に拘禁されている狂人側の話がとりわけスリリングに描けている。彼を中心に、その病状の悪化、博士との信頼から友情に発展する関係、夫を殺されて未亡人となった女性との愛憎。このうえなく濃い展開にただ圧倒される。

  • 映画監督、脚本家

    城定秀夫

    別スレッドで進行してゆく顔半分ヒゲもじゃでメル・ギブソンに見えない言語博士と顔半分ヒゲもじゃでショーン・ペンに見えない殺人犯の物語は中盤まで交わっていかないのだが、コレどっちも博士で狂人じゃん、と気づく頃にはもうすっかり作品世界に魅せられており、構成的にはやや詰め込みすぎの感があり、狂人(医者の方)が遺族女性と魅かれあってゆく展開に唐突さを感じるも、人間の心とは案外そんなものかもしれないし、辞書編纂の苦難も見ごたえ充分で、素晴らしく面白かった。

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