アーニャは、きっと来るの映画専門家レビュー一覧

アーニャは、きっと来る

「戦火の馬」の原作者マイケル・モーパーゴの児童文学を映画化。1942年、ナチス占領下のフランス。小さな村に住む13歳の少年ジョーは、ユダヤ人のベンジャミンと出会い、子どもたちを秘密裏にスペインへ逃がすという彼の計画に協力することに……。出演は『ストレンジャー・シングス 未知の世界』のノア・シュナップ、「霧の中の少女」のジャン・レノ。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    すっかり売れっ子のノア・シュナップ、「エイブのキッチンストーリー」に続く主演作。パリ在住、まだ30代の英国人監督ベン・クックソンは、30年前のマイケル・モーバーゴのヤングアダルト小説を何の工夫もなく映像化することに終始していて、ここから「2020年の映画」ならではの意義を汲み取ることは難しい。ピレネー山脈の雄大な風景と、トーマス・クレッチマンら脇を固める名優たちの安定した仕事は、年配の観客には一定の満足感をもたらすのかもしれないが。

  • ライター

    石村加奈

    物語の舞台となったピレネー地方で撮影を行った成果が、主人公ジョーの表情に表れている。マイケル・モーパーゴの原作より1歳年上の設定は、原作の邪気のなさを程よく抑えて、少年の成長をリアルに見せる。ベンジャミンと出会った時に自ら名乗る分別や、ナチス伍長から荷物を取り返せない躊躇いなど、ささやかな大人っぽさが、伍長との別れのシーンで「知らないの? それとも考えたくない?」と詰め寄るジョーの気持ちに説得力をもたらす。山頂で伍長が引用する『山の詩』も印象的。

  • 映像ディレクター/映画監督

    佐々木誠

    いつの時代、どんなコミュニティの中でも差別は生まれるが、それを守ろうとする動きも同時に生まれる。本作は南仏の村を舞台にナチスのユダヤ人狩りから子供たちを救う少年ジョーの物語だが、演じるノア・シュナップが良い。あどけない美少年っぷりもさることながら、繊細な感情表現が巧みで、常に揺れ動くジョーの心理を体現している。ユダヤ人の逃亡者、ナチスの将校、そして実の父、3人の「大人の男」との関係性、その変化が対等な人間同士の本来の姿を再認識させ、希望に繋がる。

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