建築と時間と妹島和世の映画専門家レビュー一覧

建築と時間と妹島和世

    建築家・妹島和世が大阪芸術大学アートサイエンス学科の校舎を設計する様子を写真家のホンマタカシが記録したドキュメンタリー。3年6ヶ月の時間を追い、見晴らしのよい丘の上の“公園のような建物”という思いを込めた妹島の建築の魅力を浮かび上がらせる。英語字幕付き上映。
    • 映画評論家

      北川れい子

      公園のような建物。周辺の環境との美しい調和――。新校舎の微妙に異なる模型を前にした建築家・妹島和世はその設計意図を語る。けれどもこのドキュメンタリーの意図が分からない。妹島の仕事ぶりを撮りたかったのか。新校舎の基本工事から完成までを定点カメラで撮りたかったのか。あるいは大阪芸大アートサイエンス学科のPR? いずれにしろ中途半端な産業映画という印象で、しかも完成した校舎の中はほとんど撮っていない。あ、妹島和世のファッション・センスには感心。

    • 編集者、ライター

      佐野亨

      他の建築ドキュメンタリーとは一味違い、この映画は建築の工程や建物の造形美ではなく、「建築家がいる時間」をこそ注視する。青々と茂っていた木の葉が紅く染まり枯れていく季節の循環。妹島和世のインタビューも、語られている内容以上に、語っている時間そのものに意味がある(インタビュー中に物音がして「なるべく静かにしててね」と妹島が叫ぶ場面をあえてカットせずに残していたりするのもそのためだろう)。時間を接合すべく全篇に流れる石若駿のジャズドラムも心地よい。

    • 詩人、映画監督

      福間健二

      大阪芸術大学の新校舎を「公園のような建物」にしたい建築家妹島和世。その姿と言葉と仕事場。実際に校舎が作られていく過程。三年半の時間が流れるが、題名に入れた「時間」は何を指すのか。評者が鈍いのか、監督の写真家ホンマタカシが妹島和世にどう挑み、何をつかもうとしているのかも伝わってこない。表現者対表現者という緊張の瞬間がついに訪れないのだ。そんな企画じゃないとしても、遠めの映像の反復は現場での困難さやよろこびも取り逃している。音楽の使い方もよくない。

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