THE CROSSING 香港と大陸をまたぐ少女の映画専門家レビュー一覧

THE CROSSING 香港と大陸をまたぐ少女

香港と深センを越境通学する女子高生を通して、香港と中国大陸の現状を描く中国映画。香港出身の父と大陸出身の母を持ち、毎日深センから香港の高校に通っている高校生ペイ。ある日、スマートフォンの密輸グループに巻き込まれ、危険な仕事に手を染めていく。監督・脚本は、本作が長編初監督となるバイ・シュエ。「青い凧」監督のティエン・チュアンチュアンがエグゼクティブプロデューサーを務めた。第43回トロント国際映画祭ディスカバー部門オープニング上映作品。第69回ベルリン国際映画祭ジェネレーション部門最優秀作品賞ノミネート、第14回大阪アジアン映画祭来るべき才能賞受賞のほか、国際映画祭でノミネート、受賞多数。
  • 映画評論家

    小野寺系

    香港と中国、富裕層と貧困層など、分断された世界を越境する者の自意識や生活の問題を、華奢な少女と都市の暴力性とを対比させながら描く。その意味で相米慎二監督作や、現在の中国と日本のバブル期との相似を想起させられる。現代的な小道具の使い方や、時折挿入される音楽のフレーズも効果的で、これが長篇初監督だとは思えないバイ・シュエの手腕は、今後重宝されるだろう。一方、劇映画として映える見せ方が追求されたことで、少女の困難をリアルな問題として捉えづらい部分も。

  • 映画監督、脚本家

    城定秀夫

    ごく普通の女子高生がスマホの密輸という中国特有の犯罪に手を染めてしまうという物語を思春期の気持ちの揺らぎに寄り添うことで説得力をもって成立させており、描写力の高い端正な演出に唐突に差し込まれるアヴァンギャルドなカットやサウンドデザインにも新人離れした才を窺わせる有望な監督であることに異論はないが、同じことの繰り返しに見えてしまう犯罪劇には脚本の脆弱さを感じてしまうし、適材適所が過ぎるキャラクター造形も今ひとつ凡で、あと少し艶とコクが欲しいとも。

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