オン・ザ・ロックの映画専門家レビュー一覧
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映画・音楽ジャーナリスト
宇野維正
ドン・シーゲル「白い肌の異常な夜」の女性キャラクター視点によるリメイクという冒険的な試みの前作から一転して、今回は久々にソフィアの自伝要素が強い現代劇で、少々置きにいった感が。近い時期、近い題材の傑作「マリッジ・ストーリー」と比べるのは酷か。ウディ・アレン作品を参照したアプローチのせいもあって、スクリーンで見るコロナ以前のニューヨークの街並みが、もはや現代都市というよりもローマやパリのような古都の風情で、勝手に感慨深い気持ちになってしまった。
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ライター
石村加奈
冒頭で回想される、結婚式の余韻に浸るローラ(ラシダ・ジョーンズ)と夫のごきげんなひとときから、ソフィア・コッポラ監督ならではの贅沢なプリンセス・ワールドが堪能できる。誕生日の夜、21クラブで、パパとチョコサンデーをなかよく食べるシーンなど甘すぎるのに、なんとなく引かれてしまうのは、ビル・マーレイ(好演!)扮するパパ・フェリクスのダメ中年ぶりが、オシャレと同じくらい微に入り細を穿っているからだろう。腕時計のエピソードに、ソフィア流のほろ苦さが光る。
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映像ディレクター/映画監督
佐々木誠
生まれながらのセレブリティ、ソフィア・コッポラの監督作の多くは“選ばれた人”の日常の些細な、しかし本人にとっては重大な問題を題材にしているが、本作は、より彼女自身を投影した既婚女性の苦悩、夫と子供、そして父親、その重なり揺れる「家族愛」をめぐる物語(NYの上流階級の人々を軽妙なタッチで描くのでウディ・アレン作品とも地続きの世界観だ)。ビル・マーレイの唯一無二の寂しげ&可愛げは健在で、何気ないシーンを特別な瞬間に変えるそのマジックも堪能した。
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