パリのどこかで、あなたとの映画専門家レビュー一覧

パリのどこかで、あなたと

「おかえり、ブルゴーニュへ」のセドリック・クラピッシュ監督が過去を受け入れ前に進む男女を撮ったラブストーリー。失った恋を引きずる研究者のメラニー。倉庫で働く大人しい性格のレミー。隣り合うアパートメントに住む二人は孤独を埋められずにおり……。「おかえり、ブルゴーニュへ」でも共演したアナ・ジラルドとフランソワ・シヴィルが再びクラピッシュ監督作品に参加、パリを舞台に不器用に生きる30歳の男女の成長と出会いを紡ぐ。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    序盤はメンタルヘルスや新自由主義社会における労働の問題に切り込むかのように思わせるものの、良くも悪くもいかにもセドリック・クラピッシュ的な生温いメロドラマに着地。60代を目前にして初めて組んだ若手の撮影監督や編集者と、現代の独身都市生活者の男女を描くという心意気は買えるものの、例えばマッチングアプリの虚しさみたいなものを今さら得意気に語られても。世界は既にアジズ・アンサリ『マスター・オブ・ゼロ』のような傑作を通過している。

  • ライター

    石村加奈

    ブルゴーニュも悪くはなかったが、クラピッシュがパリへ戻ってきたよろこびは格別だ。チーズ派(!)の男性レミー、白猫、エスニック料理店のクセのある店主(娘とのさりげないやりとりもキュート)、そしてロマンチックな結末。時代は変われど、クラピッシュらしい、多様性に富んだ、やさしい世界に嬉しくなる。クリスタル・マレーなど、若いシンガーを起用する音楽センスも素晴らしい。プレス資料の「“すべてを手放す”ことをしなければ、ダンスは踊れない」という監督の言葉が深い。

  • 映像ディレクター/映画監督

    佐々木誠

    隣り合うアパートに住む30歳になる男女それぞれの日常が同時進行で綴られる。仕事のストレスと過去のトラウマに向き合い、SNSを使って先に進もうと奮闘するが、うまくいかない――そんな世界のどの街にもある風景。二人はいつ出会うのか? とやきもきする一見ベタなすれ違いボーイミーツガール映画だが、都市で暮らす独り者の内面を繊細に描き、孤独とともに生きることのリアルを映し出している。クラピッシュ監督らしい「その後」を想像させるために組み立てた構造も見事。

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