BOLTの映画専門家レビュー一覧

BOLT

林海象7年ぶりの新作。日本で大地震が発生。原子力発電所のボルトがゆるみ、圧力制御タンクの配管から冷却水が漏れ始める。高放射能冷却水を止めるため、仲間と共にボルトを締めに向かった男の人生は、この未曾有の大惨事がきっかけとなり、翻弄されていく。出演は「星の子」の永瀬正敏、「おかあさんの被爆ピアノ」の佐野史郎。
  • フリーライター

    須永貴子

    主人公が、エピソード1では汚染水の流出を止めるためにボルトを締めて、エピソード2では避難区域で遺品を整理する。延々と映し出される“作業”により、観客に退屈の先にある何かを体感させようとしているのか? しかしエピソード3では、子役たちが学芸会芝居で説明する“振り”を、思わせぶりなファム・ファタールが回収する。アートフィルム、写実主義、ファンタジー。フクイチ事故に人生を狂わされた主人公を、異なる3つの質感で表現する試みは面白いけれど。

  • 脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授

    山田耕大

    ディレクターズ・カンパニーは、メンバーの監督たちが交互に他のメンバーの監督のプロデューサーを務めた。プロデューサー/根岸吉太郎、脚本・監督/林海象。制作は二人が属している東北芸術工科大学。それだけでなんだか胸が熱くなってくる。ポスト東日本大震災をモチーフにした三つのエピソードは、どれも重く、ピリピリと辛い。テーマを真摯に見つめながら、渋いエンターテインメントにしている。野放図な無駄遣いの近頃の日本「メジャー」映画に比して、この映画の凝縮力は光っている。

  • 映画評論家

    吉田広明

    主人公が同一人物とすると、1と2で、フクシマ絡みで誰もがやりたがらないが誰かがやらねばならない仕事を引き受ける、人の穢れを受け止めるキリスト風の男が、3で人魚の肉を食った不老不死として実際にGod(タイヤのGoodyearの看板のoが一個抜ける)となり、永久機関を発明する、と解釈可能かと思うが、少し見えにくい。1はSF、2は人間ドラマ、3は寓話とテイストが違うのはいいのだが、物語の飛躍をエピソード間のつながりの弱さに負わせているのは逃げに見える。

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