バクラウ 地図から消された村の映画専門家レビュー一覧

バクラウ 地図から消された村

第72回(2019年)カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した異色サスペンス。年老いた家長の死に揺れるブラジル奥地にある小さな集落バクラウ。だが突然、村はインターネットの地図上から姿を消し、上空に正体不明の飛行物体が出現するなど奇妙なことが起こり始める。出演は「蜘蛛女のキス」のソニア・ブラガ、「異端の鳥」のウド・キア。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    とにかく痛快だ。暴力を見たいとする抑えがたい欲望は、作品内の加害者や被害者、そして復讐者を通して我々に届けられる。我々鑑賞者の窃視欲動的な覗き見嗜好は、エロティシズムとも通底しているはずだ。物語上、暴力を正当化するには、まずは陰惨な抑圧・暴力があり、それに対する反動報復として描かれる。それでこそ理に適った正しい暴力となる。シューティングゲーム、地図、国家、共同体、法、そして映画も、ひとつの現実の写しであり、遊びである。人間の遊びが満載。

  • フリーライター

    藤木TDC

    映画の中間点でテイストがガラッと変わり驚くが、終盤で前半・後半の統合に完璧に成功していて「やられた」となる。前半はブラジル・ペルナンブコ州山間部集落のノンビリした日常を淡々と描写、独特の葬列シーンはドキュメントを見るよう。ただ、芸術映画的でもありエンタメ好きには退屈かも。ところがそれは大いなる伏線で、後半はジャンル映画調に派手に展開しつつ深刻な格差・環境問題を訴える。珍しいテーマではないものの構成が周到。UFOの使い方が斬新で興味深かった。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    現代の「風変わりな映画」ジャンルで流行しているテーマを、70年代の類似した映画と引き合わせて、ハイブリッドを生み出す手腕のある監督だ。そして決してB級に堕すことなく、核心には触れず周縁を回り続けるような茫洋とした語り口でアート映画を装う。ただ、もし「ウィッカーマン」に村人目線があったとしても、オチで驚かすストーリーのためお茶を濁していたら、結局いまそれをやるのは無為なのではないか?現実味として無理がある結末と、語りこぼした匂わせ要素があざとい。

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