Awayの映画専門家レビュー一覧

Away

監督・製作・編集・音楽を一人で手がけ、2019年アヌシー国際映画祭に新設された実験性・革新性のある長編作品を対象とするコントルシャン賞に輝いた台詞のないアニメ。飛行機事故で島に不時着し一人生き残った少年は、小鳥と共に島をオートバイで駆け抜ける。8歳からアニメを作り始め、手描きアニメーション、3Dアニメーション、実写など様々な短編作品を制作してきたラトビア出身のギンツ・ジルバロディス監督が、3年半かけ制作。新千歳空港国際アニメーション映画祭審査員特別賞など、国際アニメ映画祭で高い評価を受けた。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    どこかの島に不時着した後、正体不明の黒い巨人から逃れてオートバイを走らせる少年。その「巨人」が『エヴァンゲリオン』の使徒、あるいはその源流にある「風の谷のナウシカ」の巨神兵や「天空の城ラピュタ」のロボット兵を参照しているのは明らかだが、簡素な筋立てに比して異様な長さ(81分)にも思える物語を推進しているのは、ビデオゲーム的な想像力と時間感覚なのだろう。「たった1人で3年半かけて作った」という作品の裏話は、わりとどうでもいいかな。

  • ライター

    石村加奈

    ラトビア出身の監督が、3年半の歳月をかけて、たったひとりで本作(監督にとっては初の長篇となる)を完成させたというエピソードが、主人公の少年に自ずと重なる。しかし、飛行機事故に遭っても生きのび、言葉が意味を持たぬ、深遠な世界に辿り着いたというのに、物語の最後で、家族と再会した亀と同じく、少年の旅もそこに帰結してしまうとはもったいない。森も海も動物たちも独創的に美しい島で、黄色い小鳥が、旅の途中で飛べるようになったくらいの変化や広がりが彼にもほしかった。

  • 映像ディレクター/映画監督

    佐々木誠

    これは一体どこの国のどんな人たちが作ったのだろうか、と途中から考えてしまったのは、登場人物が一人で全篇セリフが一切ないというのもあるが、このオンラインRPGまんまの世界観(孤独な「レディ・プレイヤー1」とでも言うべきか)が閉鎖的なのに自由度が高く、終始、他人の夢に入り込んだような不安定な感触だったからだ。後で本作が25歳のラトビアに住む青年がたった一人で作ったということを知り納得。家にいながら得られる膨大な情報と体験が融合された現代の個人映画。

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