どん底作家の人生に幸あれ!の映画専門家レビュー一覧

どん底作家の人生に幸あれ!

イギリスの国民的作家チャールズ・ディケンズの代表作『デイヴィッド・コパフィールド』を『スターリンの葬送狂騒曲』のアーマンド・イアヌッチが映画化。暴力的な継父の登場により、優しい母との幸せな生活が一変した少年デイヴィッドの波乱の人生の行方は? 出演は「LION/ライオン ~25年目のただいま~」のデヴ・パテル、「ドクター・ストレンジ」のティルダ・スウィントン、「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」のベン・ウィショー。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    テレビシリーズを追ってる人にとっては「『Veep』のショーランナーの新作」と紹介するのが適切だろう。メインキャラクターだけでなく周辺のキャラクターもちゃんと活きている丁寧なストーリーテリング、少々優等生的なコメディ・センス、多様性やジェンダーへの周到な配慮。原作はこれまで何度も映画化されてきたディケンズの代表作だが、本作におけるアーマンド・イアヌッチのアプローチは、自社作品を現代のコードに合わせてリメイクする際のディズニーの手法に近い。

  • ライター

    石村加奈

    ユーモアあふれる登場人物たちがいきいきと描かれて楽しいが、厚みのある、小説的な人物として成功しているのは、ティルダ・スウィントンとベン・ウィショーか。ディケンズ的な世界ともいうべき人間や社会の影については、アーマンド・イアヌッチ監督の鋭さは感じられず、クリスティーナ・カサリの美術がイギリス・ヴィクトリア朝時代の格差社会を代弁した印象だ。代弁とはいえ、カラスの家に逆さの船の家、瓶詰め工場に伯母の家など緻密な舞台設計が作品の背景を雄弁に物語っている。

  • 映像ディレクター/映画監督

    佐々木誠

    ディケンズの『デイヴィッド・コパフィールド』の映画化で、作家デイヴィッドが自分の人生を振り返る構成は原作と同じ。彼の現在、記憶と妄想の境界線を曖昧にした挿話が数珠つなぎで綴られるのだが、そのダイジェスト的演出にイマイチ乗れなかった。しかし最終的に〈ディケンズの体験を基にした物語のさらなる映画化〉という幾重にも重なった虚実皮膜な人生を描くのには適していたのかも、と。その視点の作品として考えると邦題に“作家”入れたのはアリかな、とも。

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