いつか、どこかで(2019)の映画専門家レビュー一覧

いつか、どこかで(2019)

「カム・アンド・ゴー」のリム・カーワイ監督によるバルカン半島3部作シリーズの2作目。アジア人女性バックパッカーがクロアチア、セルビア、モンテネグロを旅しながら、バルカン半島の複雑な歴史に翻弄されながらも前向きに暮らしている人々の生活を知る。出演は、本作が長編デビュー作となるアデラ・ソー。2019年大阪アジアン映画祭特別招待作品。
  • 映画評論家

    小野寺系

    マカオからやってきた女性がバルカン半島を無軌道にめぐる物語だが、様々な出会いや出来事があるだけで、主人公の人生において決定的な何かが起こるわけではない。だからこそ、即興的に撮られていると思われる多くのシーンが新鮮に感じられ、観客である自分も主人公として旅をしているような錯覚にとらわれる。これこそ良い意味での“観光映画”そのものではないだろうか。ホステルでの出会いや交流が素晴らしくリアルで、複数の国を越境する監督ならではの国際感覚が活きている。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    映画の起点として劇中に登場する「別れの博物館」なる施設をネットで検索したら、クロアチアのザグレブの旧市街にありました。監督は自らをシネマ・ドリフターと称しているそうで、なるほどエピソードとシチュエイション、そして全体の流れには、その手法が反映されている。リュックひとつで異国を移動するヒロインを、美しい風景とともに写し込んだ画面は、さながら動画美女図鑑。展開にメリハリが欲しい気もするが、ドリフター的ではある。監督の手法を今後も注目していたい。

  • 映画監督、脚本家

    城定秀夫

    映画を支配するぬるい空気は心地よくもあるのだが、物語がいくらなんでも場当たり的すぎて、何ゆえにこうまでガバガバなんだ、と首をかしげるも、監督トークショーで「脚本を用意せずにスタッフ3人と主演女優のみでとりあえず現地に乗り込んで、旅先で出会った人たちを役者としてスカウトし、即興で物語を作っていった」という制作形態を知り納得至極……とはいえ映画自体はまだ「面白い」の域には届いていないのだが、この変態的な方法論には唯一無二の傑作を生む可能性を感じる。

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