ベイビーティースの映画専門家レビュー一覧

ベイビーティース

第76回ヴェネチア国際映画祭マルチェロ・マストロヤンニ賞ほか各国の映画祭で受賞したラブストーリー。病気を抱える16歳の女子高生ミラは、孤独な不良少年モーゼスと恋に落ちる。ミラの両親は猛反対するが、ミラは自分を特別扱いしない彼に惹かれていく。出演は、「ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」のエリザ・スカンレン、「シークレット・オブ・ハロウィン」のトビー・ウォレス、「ババドック 暗闇の魔物」のエシー・デイヴィス、「キャプテン・マーベル」のベン・メンデルソーン。監督は、ドラマ『キリング・イヴ/Killing Eve』などを手掛け、本作が長編デビューとなるシャノン・マーフィー。
  • 映画評論家

    小野寺系

    事情があるとはいえ、無軌道な不良少年を大事な一人娘にわざわざ近づけさせる両親の選択が描かれるが、このように社会的に物議を醸す展開を用意することで作品に注目させる手法は、低予算映画では常套手段になっているといえる。むしろ興味深いのは、10代の近視眼的な視点が映し出す世界のせつなくユニークな表現である。そして個人という存在が世界にいま存在するという現象の不思議をとらえ、観客に伝えているところだ。長篇映画は初の監督。このテーマを掘り下げていってほしい。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    原作が舞台劇だけに、少ない登場人物による人間関係の濃密さはたじたじとするくらい。加えてヒロインのミラの場面はクローズアップを多用し、向こう見ずな言動も難病の彼女が恋をして生きている喜びとして丸ごと捉え、感傷とトンガリのあわいで自在に戯れる青春映画の趣きを醸す。タイトルの「乳歯」が、娘を自分の愛情に閉じ込めておきたい親の心情か。乳歯が抜けるように大人になる娘と両親の葛藤(成長)をカラフルな映像にしたこの作品、インディーズ映画の風合いもある。

  • 映画監督、脚本家

    城定秀夫

    ストーリーだけ切り出してしまえばなんていうことのない難病モノだし、想像を超えてくるような意外な展開はとりたててないのだが、それぞれに欠陥を抱えた登場人物たちがみな愛おしく、この手の映画ではありがちともいえる揺らぐカメラワークなども小手先の技術ではない切実さで人間の心の不思議さを生のまま優しく掬い上げており、嵐のように訪れた初恋に文字通り命を燃やしてゆく少女を演じたエリザ・スカンレンの危うさと可愛らしさが同居する不均質な魅力も素晴らしく、泣いた。

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