愛うつつの映画専門家レビュー一覧
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フリーライター
須永貴子
男の秘密を知った女が、唐突に男を問い詰めるスリリングなやりとりに呼吸を忘れた。男はパニックを起こして絶句し、過去のあれこれも蒸し返す女に逆ギレ。ふだんは年上の余裕をかましているだけに、男の狼狽ぶりがあまりにも無様。「愛しているから勃たない」という悩みを打ち明けるなら、あのタイミングしかなかった。なんて考えを巡らせてしまうくらいには引き込まれた。ラストも鮮やか。雪見だいふくの使い方も上手い。もっと予算があれば、映像に色気が増すのだろうか。
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脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授
山田耕大
彼は「愛しているからこそ抱けない」そうだが、何故? 彼女を抱くと彼女を汚すことになると思ってるのか。それとも、抱いたことで彼女を失望させるのが怖いから? 現に、彼は彼女には勃起しないらしい。この何故がわからないから、「先輩に何がわかるのか」とか逆ギレしても、彼のことが理解できない。つまりは共感できないのだ。そうなれば、彼のことはどうでもよくなる。勝手にすれば? となってしまう。愛の姿形がちっとも見えてこない。「妻への恋文」という映画を知ってますか?
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映画評論家
吉田広明
夜は男娼として働いている男が、彼女に対しては勃起しない、それで別れた彼女が彼を客として買ったら出来た、と思ったら、これで彼女は彼に別れを告げる、という通俗的な展開は現実にはあるだろうし、その原因は心理カウンセラーにでも聞けば分かるのだろうが、真因が何であれ映画なら映画として理屈をつけ、またさらに重要なことには画面こそがそれを説得的にするべきなのであって、思い入れたっぷりの長回しで観客は納得すると思われたなら映画も舐められたものである。
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