世界で一番しあわせな食堂の映画専門家レビュー一覧

世界で一番しあわせな食堂

アキ・カウリスマキ監督の兄で「旅人は夢を奏でる」などを手がけるミカ・カウリスマキ監督によるハートウォーミングなドラマ。中国からフィンランドの小さな食堂に来たチェンは、恩人探しを手伝ってもらう代わりに厨房に立ち、村人たちと交流していくが……。食堂を経営するシルカを「ポニーとバードボーイ」(27th キネコ国際映画祭にて上映)のアンナ=マイヤ・トゥオッコが、食堂にやって来た料理人のチェンを香港映画「私のプリンス・エドワード」(第15回大阪アジアン映画祭にて上映)のチュー・パック・ホングが演じる。
  • 映画評論家

    小野寺系

    「バグダッド・カフェ」をより分かりやすくしたような物語は新味に欠け、主人公が新天地で心の傷を癒すという展開も使い古されている。だがこの手の作品に多い、ぶつ切りの寄せ集めに感じるシーンは少なく、長尺の場面でドラマやサスペンスがしっかりと展開する堅実なつくりになっていて、好感を持つと同時に引き込まれてしまう。異文化に戸惑う人物のいたたまれなさを示す演出や、料理人として腕を振るう場面の伏線として食材に出会うシーンを用意するなど、細かい計算が決まっている。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    昔の恩を返すために上海からフィンランドに、中国人の親子がやって来たという義理堅い話に始まった映画は、甘々のエピソードが物語を貫く。主人公2人の関係は予想どおりの結末に向かって進み、緊張感は少し物足りないが、それでもちょっと風変わりだけども憎めない登場人物の個性が、ドラマのスパイス。異文化に心を開くことが結局人間関係の出発点であり、それを食文化の違いで見せるのが大変にわかりやすい。美味しく体にも良い料理と美しい風景で程々の満足感が得られる。

  • 映画監督、脚本家

    城定秀夫

    料理が健康に作用するという概念すらない(ホントか?)フィンランドの田舎に流れてきた子連れ中華料理人と一人で食堂を切り盛りする女が出会い……という「タンポポ」的設定を手垢まみれのエピソードの羅列で展開させてゆく妙に気の抜けた映画で、人物描写や音楽の当て方なども類型的なのだが、決してつまらなくはなく最後まで幸せな気分で観られてしまうのは、皮肉屋の弟アキ・カウリスマキと対照的なミカ・カウリスマキが愚直なまでに映画と正面から向き合っているからだと思う。

1 - 3件表示/全3件