水を抱く女の映画専門家レビュー一覧

水を抱く女

第70回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(最優秀女優賞)と国際映画批評家連盟賞をW受賞したミステリアスな愛の叙事詩。哀しき宿命を背負った魅惑的な水の精、ウンディーネの神話をモチーフに「東ベルリンから来た女」のクリスティアン・ペッツォルト監督が映画化。出演は「婚約者の友人」のパウラ・ベーア、「希望の灯り」のフランツ・ロゴフスキ。
  • 映画評論家

    小野寺系

    水の精の伝説をドイツで小説化した『ウンディーネ』を基にしているが、舞台を現代に移した本作の主人公ウンディーネは、リアルな生活を営む女性のようでもあり、幻想的な存在でもある。この設定が直感的に理解しにくく、全体に茫漠とした印象を与える。物語の展開自体は伝説に沿いシンプルで、むしろ本作独自の都市論と恋愛を結びつける部分の方が、水の精の要素を扱った部分よりも面白いと感じる。ベルリンの語源である“沼地”を根拠に、都市を水中世界ととらえる感覚は独創的。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    人物の設定、ストーリーの展開が水の精のモチーフをほぼ守っているのでシンプル、かつ分かりやすい。もっかヨーロッパ映画界で才色兼備の輝きを放ち、特にこのところC・ペッツォルト監督にはお気に入りの女優と思しきP・ベーアによる、神話のファンタジーと現代都市のリアリズムの融合が決め手。彼女の美しく不思議な存在感が、監督のロマンチシズムの具現化にとりあえず成功。ドイツの近代史に題材を得て、艶やかなドラマを描きあげる監督だが、今回の神話からの題材もまた良し。

  • 映画監督、脚本家

    城定秀夫

    水を司る精霊であるウンディーネがヒロインの名前になっていることから分かるように、神話をモチーフにした悲恋物語を軸にベルリン分断の歴史なども絡めた一筋縄ではいかない映画に仕上がっており、幻想と現実のあわいを漂う妙なムードがこのラブストーリーを普遍のものに押し上げているようにも思えるが、演出面でややノリきれない部分があり、ことあるごとに律儀に鳴るピアノ劇伴は終盤ではさすがにうんざりしてくるし、死にまつわるリアリティラインのぼかし方にも疑問を覚えた。

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