ビーチ・バム まじめに不真面目の映画専門家レビュー一覧

ビーチ・バム まじめに不真面目

「スプリング・ブレイカーズ」以来7年ぶりとなるハーモニー・コリン監督作。デビュー作が成功を収めた詩人ムーンドッグ。だがその後は資産家の妻に頼り切り、フロリダで酒とドラッグとパーティの日々。そんなある日、彼の放蕩生活を変容させる事件が起き……。出演は「ダラス・バイヤーズクラブ」のマシュー・マコノヒー、「アダムス・ファミリー(2020)」のスヌープ・ドッグ、「ノクターナル・アニマルズ」のアイラ・フィッシャー。
  • 映画評論家

    小野寺系

    「KIDS/キッズ」「ガンモ」など90年代に若者の不安を表現したハーモニー・コリンだが、時代がスライドしたことで、題材はそのまま中年以降の危機に変化している。邦題が見事にテーマをとらえていて、純粋であるためにめちゃくちゃな存在であり続けることを自分に課す主人公の姿は、ある意味で修行僧の禁欲性を密かに湛えている。とはいえ、周囲に大迷惑をかける彼のような人物は、時代の中で「大いなる幻影」の貴族のごとく消えゆく運命にある。そんな種類の人々の断末魔が本作だ。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    主人公の周りにスヌープ・ドッグら個性的な面々を配し、彼らはそれなりに楽しませてくれるが、やはり主役の詩人を演じるM・マコノヒーのスター性があっての物語。なのにこの詩人役は彼には役不足のようだ。そもそもこの詩人は天才の設定であり、滅茶苦茶な発想は創作の起源、破天荒な挙動も才能ゆえの業といった、お約束的なストーリーの構成に、後半はダレぎみ。酒を飲みどんちゃん騒ぎ繰り返すだけでは、one-trick ponyな芸人の芸を見せられているようで……。

  • 映画監督、脚本家

    城定秀夫

    「ジェントルメン」と本作、奇しくも星取作品で主演が重なったマシュー・マコノヒーの荒ぶれた色気が全篇に渡って溢れており、破滅型作家役としては「バーフライ」のミッキー・ロークを髣髴させるも、映画が進むにつれその自由さは手が付けられないほど加速してゆき、他人の迷惑お構いなしに暴れ散らかす姿に段々と腹が立ってくるのだが、その先にある清々しさにはどうにも抗えない魅力があり、こんな駄文でまじめに小銭を稼いでいる自分が馬鹿馬鹿しく思えてきてしまう罪な映画だ。

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