ローズメイカー 奇跡のバラの映画専門家レビュー一覧

ローズメイカー 奇跡のバラ

「ルージュの手紙」のカトリーヌ・フロ主演、力を合わせ成長するはみだし者たちを描いた人間ドラマ。人を雇う余裕もないバラ園を営むエヴは、素人3人をスタッフに加えるが失敗続き。エヴは愛するバラ園を懸け、世界屈指のバラ・コンクールに挑む決心をする。監督は、本作が長編2作目の新鋭ピエール・ピノー。世界有数のバラクリエイターが監修している。
  • 映画評論家

    小野寺系

    強い作家性は感じられないものの、薔薇園の仕事のあれこれを楽しませながら観客に伝える、親しみやすい職業映画だ。とくにカトリーヌ・フロ演じる、薔薇園を切り盛りする主人のコメディ調の演技が楽しく、目が離せなくなる。その一方で、労働者の苦境や犯罪歴のある青年の才能を伸ばそうとする内容の脚本が、ケン・ローチ監督の「天使の分け前」の設定に似過ぎているという点には留意しておきたい。その上で、社会風刺の要素が幾分抑えられてしまっているのは、なんとも居心地が悪い。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    カトリーヌ・フロという女優には、観客をドラマに引き込む天賦の才がある。崖っぷち育種家に扮して、その才を自在に発揮する。奇跡の逆転人生をやってのけたその方法は、必ずしも世間様に自慢できないが、人情味に愛敬をたっぷりまぶして、引き込む。職業訓練所から安い賃金で雇った園芸の素人3人と、従業員の教育には素人のヒロイン。素人たちが知恵を出しながら織りなす逆転人生は、彼らの無茶で危なっかしい姿が、観客を味方につける。集団コメディはフロの才あってのものだった。

  • 映画監督、脚本家

    城定秀夫

    序盤でいきなり元犯罪者である就労者のスキルを使って大手栽培業者からバラを盗み出すというまさかのズッコケクライム展開に笑うも、その後は順当すぎる捻りのない筋運びで、愛と挫折と努力の末にたどり着く結末もタイトルから予想される域から一歩も出ていないのだが、カトリーヌ・フロの「美のない人生は虚しい」という、これまたド直球なセリフがなぜだか妙に胸に刺さった次第で、人生には時としてこんな映画が必要だと思わせてしまう力を秘めた、慎ましやかで美しい小品である。

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