アウトポストの映画専門家レビュー一覧

アウトポスト

2009年、アフガニスタンに設置された米軍の前哨基地で勃発した「カムデシュの戦い」をジェイク・タッパーのノンフィクションに基づいて映画化。致命的な弱点を抱えたキーティング前哨基地はある日、綿密な計画に基づくタリバン兵の猛攻撃を受ける。出演は「パシフィック・リム:アップライジング」のスコット・イーストウッド、「スリー・ビルボード」のケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズのオーランド・ブルーム。監督は「ザ・コンテンダー」のロッド・ルーリー。
  • 映画評論家

    小野寺系

    基本的に有利な立場にありながら、前線基地で数的不利な立場に追い込まれるアメリカ軍の状況や、実際にこの戦いに参加した兵士が同じ役で出演しているだけあって、リアリティある兵士の表現が見られるのは興味深い。アラモ砦の戦いを連想させる戦闘の絶望的な描写は、観客をも戦場に巻き込むような映像的な迫力と細部の説得力がある。ただ、ピンチに陥ったり死亡した兵士たちを英雄として持ち上げ、無理な作戦を強いた軍の責任の所在が深く追及されていない点には、疑問を感じる。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    個人的に知る限り、70年代以降のアフガニスタンは切れ間なく紛争が続く、泥沼の紛争地域である。ソ連軍の侵攻と撤退、米国同時多発テロ後には米ブッシュ(子)政権によるアフガン攻撃開始により、国土も治安も人心もさらに荒れ傷む中、ついには中村哲氏の殺害まで。撤退準備中の米軍前哨基地を舞台にしたこの戦争映画は描写が生々しく痛ましい。主題の“生き抜く”を熱演する注目の俳優たちからは戦場のリアルが伝わる。が、米国の視点で描かれた戦争であることを頭に入れておきたい。

  • 映画監督、脚本家

    城定秀夫

    このような地獄の戦闘になってしまった要因である作戦の不備や前哨基地の劣悪な立地条件の詳細、政治背景などはさほど描かず、尺の半分を戦闘描写に費やしている純度の高いミリタリーアクション映画で、どうやって撮ったのか見当もつかない臨場感抜群のショットの数々を手に汗握って観たとはいえ、戦争に対する映画の向き合い方を考えると、米国軍人たちの雄姿をひたすらに称えるラストを素直に受け止めることはできないし、これがわずか10年前の出来事という事実にも肌が粟立つ。

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