狼をさがしての映画専門家レビュー一覧
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非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト
ヴィヴィアン佐藤
60年代の安保闘争などの学生運動から70年代は世界的に政治の季節となり、より過激化していった。しかし世界中のその活動家はほぼ消滅。現在は政治的な大義のための運動というより市民レベルの差別や嫌悪が顕在化している。世界中のアナキストたちはもはや過去の遺物なのだろうか。国家の在り方も変わり、中東以外のいわゆる国家間戦争の形も変遷し、国家より国際企業の存在感が増大している。そろそろその様な国際企業に対して異議を唱える市民活動家が出てきてもおかしくない。
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フリーライター
藤木TDC
韓国人監督は取材成果と自国の歴史を顧み、もっと強く日帝侵略を糾弾をすべきだったのでは。これでは何を言いたいか分からない。東アジア反日武装戦線の爆弾闘争に関する言及は『腹腹時計』など文献の朗読と新聞画像のみで当時の報道映像はない。大部分は大道寺将司らの足取りを追う詩的風景映像や支援者たちの穏やかな語りで抽象的な内容だ。現在も指名手配犯が逃亡中の「狼」らの理念は服役囚支援者により反原発運動などへ拡散し、今なお総括段階にはないと知ったのは収穫だが。
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映画評論家
真魚八重子
いま、政治的思想について語るのはことさら慎重を期し、日本だけでも異なる考えがぶつかり合っていて非常に危うい中、この映画は東アジア反日武装戦線側からの、一方的なまとめと現状の様子をある意味、撮りっぱなしで提出する。緩慢だろうと時間の流れはあるはずなのに、縦の流れではなく平面を見ているような進み方。キム・ミレ監督が「狼」の存在をピックアップした時点で、なんらかのメッセージ性は発生しているが、思想に対し解釈や介入を避けるのは物足りない接し方だ。
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