Arc アークの映画専門家レビュー一覧

Arc アーク

「蜜蜂と遠雷」の石川慶が、SF作家ケン・リュウの短編小説『円弧』を映画化。そう遠くない未来。最愛の存在を亡くした人たちのため、生前の姿のまま遺体を保存する“ボディワークス”として働くリナは、人類初の不老不死処置を受け、永遠の命を得るが……。出演は「ファーストラヴ」の芳根京子、「ヤクザと家族 The Family」の寺島しのぶ、「さんかく窓の外側は夜」の岡田将生。
  • フリーライター

    須永貴子

    近未来を題材にした日本のSF映画は、近未来的なデザインのガジェットや衣裳、CGやVFXで処理した「それっぽい」映像により、既視感に起因する安っぽい仕上がりになりがちだ。しかし本作は、生身の体や、今の日本に実在する物体にこだわり抜いた。その結果、作品のテーマやストーリー、未来に広がっているかもしれない景色が、観客にとって地続きのものに。お膳立ては成功したのに、永遠の命という大問題に対して決断を下す時の、主人公の心の描写が食い足りない。

  • 脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授

    山田耕大

    アーク(円弧)という題名は何だろう。円が永遠の命だと仮定すると、円弧はそれに至らず終わるということなのか。ATG真っ盛りの70年代だったら、諸手をあげて賛同されたのでは? 何か懐かしさのようなものを感じてしまった。「生と死」というのは映画にとっても永遠のテーマである。答えが決して出ない最難関のテーマ。が、この映画を観るとそれにあっさりと答えを出してみせているような錯覚を覚えてしまう。が、困惑もする。生きている人間がもう既に死んでいるかのようなのだ。

  • 映画評論家

    吉田広明

    不老不死となったことによって人間の生がどう変化したのかという思考実験かと思ったが、死ぬことを受け入れる男が現れ、生とは生きる意味のある時間のことなのだと知らしめるまで、ヒロインはただ長生きしているだけで何も考えていなかったとは。彼女も結局死を選ぶ(それも生きてきた経験を踏まえての選択ではあるのだが)のだから、不老不死の設定は無意味化し、元の木阿弥、弧どころか円ではないか。「スタイリッシュ」な映像美、一部モノクロ映像のギミックもこれみよがしで鼻につく。

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