野良人間 獣に育てられた子どもたちの映画専門家レビュー一覧
野良人間 獣に育てられた子どもたち
メキシコに伝わる禁断の実話を調査し、ドキュメンタリー・タッチで描いたホラー。1987年、南米の山奥にある小屋が全焼。焼け跡から見つかったビデオテープが、2017年に再び発見される。テープには、まるで野獣のように野生化した子どもたちが映っており……。監督は、メキシコで数々のテレビドラマやドキュメンタリーの編集を手がけてきたアンドレス・カイザー。
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映画・音楽ジャーナリスト
宇野維正
「非文明的環境で育てられた子どもたち」という題材には目新しさはないが、その背景として描かれているメキシコのカトリック教会内の争い、そしてドキュメンタリー作品と見紛う真に迫ったアプローチに興味を引かれた。もっとも、ファウンド・フッテージものの宿命である映画的快楽の欠如を凌駕するほどの驚きが待っているわけではなく、良くも悪くもリアリティ重視の姿勢が最後まで貫かれている。序盤でワクワクさせられた時点で、ジャンル映画としては成功しているわけだが。
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ライター
石村加奈
偏った宗教観から森に引き籠る元修道士、既視感のある閉鎖的な田舎町など、意味深に煽るモチーフが多く、観終わった後、試写状にあった「メキシコに伝わる封印された禁断の実話」を検索したほどだ。フェイク・ドキュメンタリーとは、宣伝の妙に一杯食わされたわけだが、では「野良人間」の造語などによる表面的な刺激以外に、例えば本作では、何をもって人とし、獣とするのか、その骨格がなかったように思う。『野生児の記録』を読んだときの神話性や、慎重さは、見いだせなかった。
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映像ディレクター/映画監督
佐々木誠
フェイクドキュメントは、嘘の中に潜んでいるリアルをいかに見つけ出して楽しむか、作り手の仕掛けと観る側の想像力がより試される。本作は80年代に起こったある事件の真相を、残された当時の映像と現在のインタビュー映像で構成されているのだが、野良人間研究記録の作り物感と編集のテンポの悪さが絶妙に合わさり独特のリアリティを醸している。出てくる人間それぞれの話に臆測と隠し事が垣間見え、都市伝説が生まれるカラクリをこのジャンルで描いているのが面白い。
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