めまい 窓越しの想いの映画専門家レビュー一覧

めまい 窓越しの想い

「哭声/コクソン」のチョン・ウヒ主演で、現代社会の生きづらさと希望を独自の視点で描いたドラマ。不安定な生活に悩む30代の契約社員ソヨンはある時、オフィスの窓の外から、ロープにぶら下がったまま自分を見つめる清掃員の青年グァヌと出会うが……。共演は「LETO -レト-」のユ・テオ、「サイコだけど大丈夫」のチョン・ジェグァン。監督は「ラブ・フィクション」のチョン・ゲス。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    映画史的な見地からは「随分と大胆なタイトルをつけたな」(英題も“Vertigo”)と思わずにはいられないが、ちょうど今回取り上げた作品でいうと「ファーザー」、あるいはアマゾンの「サウンド・オブ・メタル」にも通じる、主人公の知覚を映像化(&音像化)した作品。その野心的な試みを結局はメロドラマに着地させてしまうところは韓国映画らしいが、女優(この呼称を自分は敬意を持って遣い続けます)の美しさで最後まで持たせられるのも現在の韓国映画の強みだろう。

  • ライター

    石村加奈

    不安定なヒロインを取り巻く不穏な状況が、冒頭から積み上げられていく。彼女の耳の不調の原因が、実父の暴力だったと知り、絶望的な気持ちになった。窓越しに、ヒロインへの想いを一方的に募らせていく清掃員(チョン・ジェグァン)の挙動を、優しさと受け取るか、恐怖に感じるかは微妙なところだが、彼の背景をもっと知りたくなるような、魅力的な人物ではあった。薄幸系ヒロインを、チョン・ウヒが好演。過酷な運命に負けない、しぶとい存在感は、チョン・ドヨンを髣髴とさせる。

  • 映像ディレクター/映画監督

    佐々木誠

    ほぼ一人の女性社員の日常を追っているだけの特に何も起きない展開をサスペンスフルな画作りと劇伴で不穏に演出。高層ビルにあるオフィスが舞台、彼女はデザイナーで秘密の恋人は美男、それを見守る可愛い系の窓ガラス清掃員の青年までいて、絵的にはキラキラしたドラマになりうるのに全篇息苦しい空気が漂い、観ていて辛い。それは監督の意図通り、派遣女子社員のリアルな現状、その真綿で首を締められるような日々の疑似体験。表裏の違和感、唐突なラストが不思議な余韻を残す。

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