葵ちゃんはやらせてくれないの映画専門家レビュー一覧

葵ちゃんはやらせてくれない

「れいこいるか」のいまおかしんじ監督によるタイムスリップ・ラブストーリー。映画監督志望の男・信吾の前に、1年前に自殺した映画研究部の先輩・川下さんの幽霊が彼の命日に突然現れる。片思いをしていた後輩・葵ちゃんとセックスがしたくて蘇ってきたのだという。出演は「名前」の小槙まこ、「ろんぐ・ぐっどばい 探偵 古井栗之助」の松嵜翔平、森岡龍。
  • フリーライター

    須永貴子

    2019年に自殺した川下先輩が翌年の命日に化けて出て、主人公の慎吾を連れて大学時代にタイムスリップ! その目的は葵ちゃんとのセックス! しょーもな! と思ったが、尻上がりに人間讃歌が聞こえてきた。3年連続でセックスチャレンジする中で描かれる、慎吾の人生の激変。それを踏まえた上での、葵と慎吾による川下先輩を弔うためのセックスは、二人から川下への愛や、生きることへのポジティブな矢印がバカバカしさを上回り、珍妙なのに爽やかなカタルシスがあった。

  • 脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授

    山田耕大

    いまおかしんじと言うと「苦役列車」(監督・山下敦弘)の脚本を書いたことに思いを馳せる。好きな映画だった。彼が脚本で良かったと思った。また、彼にはいろんな映画で、ちょっとした役で出ているところに出くわしたりする。なぜか、いまおかさんというと「味」という言葉が浮かぶのだ。この映画も味がある。たわいもない話だ。身も蓋もないとも言える映画でもある。腑抜けたちが、「そう言えば」生きている。味の決め手は何もないのに、いい味がする。出来不出来などどうでもよい?

  • 映画評論家

    吉田広明

    自殺した映研の先輩が幽霊として現れ、好きだった葵ちゃんと性交できる唯一のチャンスだった過去を生き直す。最近多い過去改変ものだが、ありがちな多幸的な結末ではなく、一向にうまくいかないという突き放し方、一方で葵ちゃんと性交するためだけに何度も生き直す先輩の姿に、自身挫折を繰り返す周囲の人物たちが感化されて前向きに生きていこうとする形で希望を持たせる。巻き込まれながらも事態を利用していい目を見ようとする、小狡いがどこか憎めない後輩の造形も良い。

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