幸せの答え合わせの映画専門家レビュー一覧

幸せの答え合わせ

「ブレス しあわせの呼吸」などの脚本家ウィリアム・ニコルソンが、両親との実体験を基に監督・脚本を手がけた人間ドラマ。29年間連れ添ったグレイスとエドワードだったが、一人息子ジェイミーが久しぶりに帰郷したある日、突如エドワードが別れを切り出す。妻グレイスを「20センチュリー・ウーマン」のアネット・ベニング、夫エドワードを「マイ・ブックショップ」のビル・ナイ、二人の息子ジェイミーを「ゴッズ・オウン・カントリー」のジョシュ・オコナーが演じる。
  • 映画評論家

    小野寺系

    夫婦関係の危機を、深刻かつ知的に描いた内容に驚かされる一作。作家であり脚本家としてのキャリアも豊富なウィリアム・ニコルソンの小説を、自身が監督として映画化しているからこその、人間の喪失感に真摯に向き合って安易な展開に転ばない文学的アプローチには、凡百の映画には真似のできない深みと力強いテーマが存在する。さらに、アネット・ベニングの修羅場における燃えるような演技によって、映画ならではの魅力も横溢。現時点で過小評価されている作品の一つだと思わせる。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    当事者夫婦と息子の三人の、人物描写と話の運びが巧みだ。関係が完全に破綻した者同士が同じ家で暮らす残酷さを鋭く描写する。それも互いの欠点をぼかすことなく、である。結果、屋内の場面は室内劇に似た逃げ場のない緊張感があり、屋外場面は感情を解放してくれるという、くっきりした対照性をもったドラマに。両親の間で板挟みになる息子の客観的な立ち位置がドラマに普遍性をもたらし、かつ主題を支える。誰でも自分に引き寄せることができる物語だけに、邦題にもうひと工夫ほしい。

  • 映画監督、脚本家

    城定秀夫

    こわれゆく夫婦と、板挟みになって途方に暮れる息子の物語はなかなか身につまされるものがあり、婚姻関係につきまとうエグ味と愛情の残酷さを生のまま捉えることには成功しているのだが、各アングルからマスターを撮って編集時に繋ぎを考えているように見えるショットとしての意図が脆弱なカッティングが映画の強度を下げてしまっており、着地点を見失い、それっぽいイメージ画とそれっぽい言葉を散らして雰囲気に逃げたかのようなポエミーなラストも個人的にはあきたりなく思った。

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