映画 太陽の子の映画専門家レビュー一覧

映画 太陽の子

歴史的事実に基づき、日本の原爆開発を背景にした青春群像劇。2020年放送のドラマ版に異なる視点と結末を加えた劇場版。軍から密命を受け原子核爆弾の研究開発を進める修、幼馴染の世津、戦地から一時帰宅した修の弟・裕之は久しぶりの再会を喜ぶが……。出演は、「ターコイズの空の下で」の柳楽優弥、「花束みたいな恋をした」の有村架純、「天外者」の三浦春馬。監督・脚本は、ドラマ『青天を衝け』の黒崎博。音楽は、「愛を読むひと」のニコ・ミューリー。サウンドデザインは、「アリー/スター誕生」のマット・ヴォウレス。
  • フリーライター

    須永貴子

    プロの仕事を堪能できる秀作。特に、主演の柳楽優弥をはじめ、俳優陣の演技が素晴らしい。戦時中を描く作品は、ファッションや髪型などでキャラクターをわかりやすく区別ができない上、場面が大学の薄暗い研究室となるとなおさら見分けにくい。それなのに、原子核爆弾の開発に勤しむ7人を、早い段階で観客に識別させるカット割りと演出に唸った。もちろん、俳優たちの役への深い理解が伝わる芝居ありき。研究室のシーンに参加した俳優たちに、アンサンブル演技賞を贈呈したい。

  • 脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授

    山田耕大

    予備知識なく見始めて、これがテレビ関係者によって作られたものだろうと感づき、エンディングロールが流れて、やはりそうだったのかと知る。僕はテレビドラマは大好きだが、映画とは別種のものだと思っている。この映画(?)がテレビ的だと思ったのは、たぶん人物造形がいかにも社会派ドラマにありがちなものだったため。つまり「正しき人々」なのだ。原爆を製造しようとしている人々だが、究極の平和を実現するためと言い張っている。「正しき人々」はどこか胡散臭い。

  • 映画評論家

    吉田広明

    幼い頃からの夢で物理学を専攻、愛情深い母、友達のような弟、芯のしっかりした従妹からなる家族にも恵まれた大学生。科学や家族という貴重なものを戦争が汚染するわけだが、しかし彼が従事する科学とは原爆の製造であり、科学自体の価値観にも疑念が生じる(次に京都に落とされるかもしれない原爆の爆発観測のため比叡山に籠るという展開もなかなかに狂気じみている)。映画の本体は科学の魅惑と狂気にあり、悪く言えばありきたりな戦時下の家族劇が本体の深掘りを弱化させている。

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