スザンヌ、16歳の映画専門家レビュー一覧

スザンヌ、16歳

2020年カンヌ国際映画祭の「オフィシャルセレクション」に選定されて話題を呼んだ、20歳の新人女性監督スザンヌ・ランドンの脚本・監督・主演映画。パリ・モンマルトルを舞台に高校生が年の離れた大人の男性に恋をする、ひと夏の物語。スザンヌ監督は15歳の時に本作の脚本を執筆。誰にも打ち明けられず、自身の内側に抱えていた思春期の憂うつや恋愛への憧れを昇華させた。この脚本を元に19歳で映画制作に着手し、主演として複雑で不安定な少女の内面を体現、また監督として、その繊細さを瑞々しくスクリーンに映し出した。この若き才能のもと、「BPMビート・パー・ミニット」でナタンを演じたアルノー・ヴァロワや、「17歳」「おもかげ」のフレデリック・ピエロほか、コメディ・フランセーズの役者など実力派俳優たちが結集。また音楽をヴィクトワール賞(フランス版グラミー)の最優秀アルバム賞を獲得した実力派シンガー・ソングライター、ヴァンサン・ドレルムが担当した。ダンスを介した男女のやり取り、現代演劇の挿入のほか、映画、文学、舞台、音楽といったあらゆるカルチャーの名作へのオマージュを盛り込みながら、新世代のやわらかくも鋭い感性で綴られた本作。時代を超え、年齢や性別を超えて誰の心にも通じる普遍性と斬新さをあわせ持つ、まったく新しいフランス映画。
  • 映画評論家

    上島春彦

    良く出来た習作で楽しめるものの、脚本が作品世界をまだ客観視するに至っていない印象。主演者は昔だとソフィ・マルソーとかシャルロット・ゲンスブールとか、もっとさかのぼればジャクリーヌ・ササールの線なのだが、優等生なので肩入れできない。難しいものだ。だらしない女だったらもっと嫌な感じだったはずだから。アクションの同調という趣向が面白く、もっとそういう演出で攻めても良かったか。彼女が惚れる舞台俳優も物分かりが良すぎる気が。演出家のパワハラも問題だな。

  • 映画監督

    宮崎大祐

    監督本人演ずるボリス・ヴィアンを愛読する自意識強い系少女が当然のように同級生たちとはなじめず、年上の舞台俳優と恋に落ちるという筋書きだが、ふたりの出会いや心通わせる瞬間が演出の淡白さやカメラポジションのつたなさゆえにとらえきれておらず、なかなか映画に入っていけない。それでも、不安な時にはなんとなく家族のかたわらに佇んでしまうという、認めがたい幼さを顕在化させる一連のシーンには、この監督でしかとらえられない生のリアリズムがしっかりと映っていた。

  • 映画執筆家

    児玉美月

    20歳の監督自身によって演じられる16歳のスザンヌから決して視線を逸らさないカメラは、この映画を少女のある一時期の成長を追った実験的で虚実皮膜な記録映画たらしめている。16歳の少女と35歳の男性という年の差恋愛における危うさは、性行為がダンスに置換され、決定権を少女側に握らせることで聡明に回避されているだろう。ただ「17歳の肖像」(09)など同一のテーマを扱う映画は数知れず、そのなかで何か飛び抜けて秀でた新奇性があるかと問われると断言するのが難しい。

1 - 3件表示/全3件