COME&GO カム・アンド・ゴーの映画専門家レビュー一覧

COME&GO カム・アンド・ゴー

大阪を中心にユニークな創作活動を続ける中華系マレーシア人の映画作家リム・カーワイが贈る“大阪三部作”の3本目となる作品。大阪の中心地・梅田北区。老婦人の遺体が発見され、警察の捜査が進む中、外国人たちと日本人の人間模様が繰り広げられる。出演は「あなたの顔」のリー・カーション、「ソン・ランの響き」のリエン・ビン・ファット、「花よりもなほ」の千原せいじ、「風の電話」の渡辺真起子。
  • 脚本家、映画監督

    井上淳一

    リム・カーワイのスゴさは国境も映画も軽々と(ではないかもしれないが)越えていくことではなかろうか。本作はリムのある到達点だと思う。全篇から漂う映画としか形容しようのない香り。人も街もリムの手にかかると実に様々な顔を見せる。どの国の人も同じように抱えるよるべなさ。物語の着地点として未消化なところも多いが、それすらも現実ってそうだよな、なんでもかんでも解決しないよなと思わせる力がある。短所も長所に。リムがこんな映画を撮るなんて。悔しい。負けたくない。

  • 日本経済新聞編集委員

    古賀重樹

    大阪・梅田を舞台に10カ国・地域のアジア人たちが交錯する群像劇。当り前のことだが、一昔前の豊かな日本と貧しいアジア、おごれる日本と可哀想なアジアという図式から見事に脱している。裕福な中国人がいれば、貧しい日本人もいる。上品なマレーシア人もいれば、助平な奴はどこにでもいる。そんなアジア人が断絶したり、つながったり。一人一人が複雑な事情と葛藤を抱えた人間で、そいつらが行き交う混沌とした街としての大阪の魅力が浮かぶ。映画漂流者リム・カーワイの面目躍如。

  • 映画評論家

    服部香穂里

    リム・カーワイ監督の“ホーム”かつ“アウェイ”でもある大阪に対する、独特の感覚や絶妙な距離感が光る。夢の実現を焦る移民が道を踏み外していく過酷なリアルから、大阪慣れしたAVオタクの台湾人(リー・カンション!)と渋々ひとり観光を強いられた中国人が、超大衆居酒屋で意気投合するファンタジーまで、同じ空気感の中で自然と成立させてしまう繁華街・キタ。アジアの一角に陣取る、コテコテもセカセカもしていない懐の深い大阪像を、再発見させてくれる佳篇。

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