ディナー・イン・アメリカの映画専門家レビュー一覧

ディナー・イン・アメリカ

パンクロック好きの孤独な少女が警察に追われる男を家に匿ったら、なんと覆面バンドの推しメンだった。やがて社会不適合者や厄介者と蔑まれる二人は心惹かれ合い、社会の偏見をぶっ飛ばしてゆく。ベン・スティラーがプロデュースしたアナーキック・ラブストーリー。主人公のパティを演じるのはエミリー・スケッグス。ミュージカル『ファン・ホーム』で2015 年のトニー賞ミュージカル助演女優賞にノミネートされ、近年は「ミスエデュケーション」(18)などの映画にも出演している。パンク・ロッカーのサイモンに扮するのは、「アメリカン・スナイパー」(14)「バトル・インフェルノ」(19)などのカイル・ガルナー。監督は「バニーゲーム」(10)のアダム・レーマイヤー。新型コロナの影響でいまだ本国アメリカでは公開されておらず、先立っての日本公開となる。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    サイモンは序盤に傍若無人な発言や振る舞いを繰り返すが、田舎の因習的な社会や家族といった制度に中指を突き立て続ける彼の姿勢と、その後パティやその弟に見せる優しさは全く矛盾するものではない。一見正反対なようでいて、まともさを押しつける規範にどうしても従えない不器用さと純粋さを共有するサイモンと出会ったことで、パンクスとして少しずつ目覚めていくパティの表情の変化が感動的。おそらく本作を最後まで観れば誰もが二人をとにかく愛さずにはいられないはず。傑作!

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    日常の娯楽といえばダイナーで食事をするかゲームセンターで散財するしかない、見事なまでの退屈で平凡な田舎町で展開される変わり者同士のこのラブストーリーは、最終的な目的地が一向にわからず、その道行を見守るのはかなり辛い。彼らは一体なにを目指しているのか。目指すものがないことの絶望を語っているわけでもなさそうだ。ここではないどこかへ向かうこともせず、かといってこの場に蔓延るしがらみに向き合うこともなく生まれたパンクソングは誰の胸に響くのだろうか。

  • 文筆業

    八幡橙

    片田舎の掃き溜めのような路地裏で出会った、自称「負け犬」と「負け犬」。ダメ人間meetsダメ人間。だが、ダメを掛け合わせたその先で、ゲロだのクソだの放送禁止用語だの、あらゆる汚泥をべちょっと集めて篩にかけたら、残ったものはごく小さい、けれどとびきり純度の高い一粒の結晶だった……。「バッファロー66’」の地獄の実家を思わせる“アメリカの晩餐”の居た堪れなさと、そこから解放される二人の夢の遊戯場と、サイモンの澄んだ涙に、恋というより同士の無二の愛を見た!

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