MONOS  猿と呼ばれし者たちの映画専門家レビュー一覧

MONOS  猿と呼ばれし者たち

第92回米アカデミー賞国際長編映画賞コロンビア代表となったサバイバルドラマ。世間から隔絶された高地で暮らす8人の少年少女。ゲリラ組織の一員としてコードネーム“モノス”と呼ばれる彼らは、敵からの襲撃を受け、ジャングルの奥地へと身を隠すことに。監督は、「ポルフィリオ」のアレハンドロ・ランデス。出演は、「キングス・オブ・サマー」のモイセス・アリアス、「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」のジュリアンヌ・ニコルソン。音楽は、「ジャッキー ファーストレディ 最後の使命」のミカ・レヴィ。第35回サンダンス映画祭ワールド・シネマ・ドラマ部門審査員特別賞受賞。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    余計な情報を観客に一切与えない引き算の演出が見事に奏功している。物語の舞台、組織や敵の内実、兵士たちの出自や性別を明かさずとも、雄大な山と恐ろしい森、そこで蠢く泥だらけの子供たちが直面する剥き出しの暴力をただ見せれば良い。無機質なミカ・レヴィの劇伴とも響き合う本作の確信犯的な曖昧さは、単に寓話的な雰囲気を醸し出すためのものではなく、同時に社会派作品とは全く異なる角度から観客にある程度兵士たちの生きる極限を追体験させる機能をも果たしているだろう。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    彼らの目的はまったくわからないが、ただならぬ雰囲気をまとった若者のゲリラ兵士たちが映っている。彼らはほとんどカルト集団のようにも見える。様々な価値観や文化が尊重される社会背景と、観客一人一人が考察者であり、謎が謎を呼び作品を広めていく作品受容のあり方によって、映画はこうした謎の集団を今後ますます描くと思うが、決して思想的、抽象的にならない本作の俳優たちやジャングルの圧倒的な存在感は目を見張る。銃器が画面に出た瞬間の即物的な怖さもただ事ではない。

  • 文筆業

    八幡橙

    「2001年宇宙の旅」のモノリスに群がる猿たちを想起させる幕開けから、未知にして未踏のゾーンに引きずり込まれる。画と音の圧倒的な力。獣のような若者たちの、本能?き出しのようでいて、妙に弁えたところもある異様な生態。入口も出口も今いる地点もわからない、不穏な空気が全篇に満ちる。自分がちっぽけな小石になって、遠いジャングルの激流に呑み込まれ、掻き回されているかの如き鮮烈な体験。新時代のキューブリック、アレハンドロ・ランデスの名を、深く、心に刻んだ。

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