マルジェラが語る“マルタン・マルジェラ“の映画専門家レビュー一覧

マルジェラが語る“マルタン・マルジェラ“

    あらゆる取材や撮影を断り続け、謎に包まれていたデザイナー、マルタン・マルジェラが初めて制作に協力したドキュメンタリー。これまで一切語ることのなかったキャリアやクリエイティビティ、自身に影響を与えた祖母や子供時代について、本人の言葉でつづる。監督は、「ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男」のライナー・ホルツェマー。
    • 映画監督/脚本家

      いまおかしんじ

      ナイーブで頑固な人なんだろうと思う。ドキュメンタリーに出演することはオッケーなのに、顔を映すなっていうのは相当ひねくれている。本人がめっちゃ喋ってるし、服を作っている手とかは写っているので、顔が見えないことへのストレスはあんまりない。ファッションショーの描写がたくさんあって、モデルたちやスタッフの誰もが、彼のことを好ましく思ってるのが、よくわかる。本人ではなく、その周りを描くことによって、より本人を描けてるって、面白いと思った。

    • 文筆家/女優

      睡蓮みどり

      知的かつエレガントな思想をのせ、マルジェラ自身の声が映画全体を誘引する。プロが読むナレーションでもインタビューでもなく、この語りは同時に見えないままに「匿名でいることで自分を保つ」マルジェラその人を映し出すことに成功している。前作のドリス・ヴァン・ノッテンのドキュメンタリーも素晴らしかったが、ホルツェマー監督は距離を保ちながらも被写体の中に確実に入り込んでいることが伺える。ファッション史における貴重な記録でありながらそれ以上に未来が映っていた。

    • 映画批評家、東京都立大助教

      須藤健太郎

      背景音楽が鳴り止まないのが気になるし、なんでも足せばいいと思っているふうで、どうも好きになれない。情けないBGMの流れるなか、マルジェラが「父が美容師で…」と語り始めるくだり。美容院の様子を映したモノクロのフッテージが挿入されると、プロジェクターの動作音を真似たカタカタ音がさらに重ねられる。一事が万事この調子である。ラストの眼鏡も失笑もの。むろん被写体に非はない。声も手もよかった。作業を担い、他人と関係を持つ、媒介となる手。あとは幼年期のこと。

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