スイング・ステートの映画専門家レビュー一覧

スイング・ステート

「バイス」のスティーヴ・カレルが米民主党の選挙参謀を演じるコメディ。大統領選でトランプに大敗した民主党陣営を仕切るゲイリー・ジマー。農村部の票を取り戻す秘策として、Youtube動画で話題のヘイスティングス大佐を田舎の町長選挙に立候補させるが……。共演は「ピーター・ラビット」のローズ・バーン、「ライ麦畑で出会ったら」のクリス・クーパー。風刺ニュース番組の司会で人気を博したコメディアン、ジョン・スチュワートによる監督第2作。
  • 映画評論家

    上島春彦

    問題の町長候補になるのが左派リベラル映画の傑作「メイトワン1920」で主役を演じたクリス・クーパー。という仕掛けが憎い。実はこの映画のポイントは物語終了の後、エンドクレジットにおいて本物の政治ジャーナリストが語るコメントにこそある。果たして彼のトラップは「良き民主主義」体現であったのかどうか。謎はむしろハッピーエンド後に集約されて現れるということだ。スティーヴを巡る三人の女についてもなぜか三つのオチが並立して示されるという不条理が鍵。なのかな。

  • 映画執筆家

    児玉美月

    主人公の偽善的な「多様性」への配慮が戯画化されているのだろうが、本作は意図的な戯画化要素のみで構成しきれておらず、随所に作り手の無意識による差別的思想が露呈してしまっているように見受けられる。その時点で風刺作品として脆弱さを抱え込んでしまったのではないか。それまでの展開を覆す結末にあるカネと政治をめぐる啓蒙的なメッセージそのものは真っ当なのかもしれないが、スティーヴ・カレルのコメディ俳優としての力量をもってしても質の高いコメディ映画とは言い難い。

  • 映画監督

    宮崎大祐

    私にはスティーヴ・カレルかローズ・バーンが出ているコメディにハズレなしという持論がある。とはいえ選挙コメディと聞いて少しだけ警戒したことは認めなければならない。だが蓋を開けてみると本作も持論に違わぬ抜けのよい快作であった。選挙という民主主義社会の根幹に位置するシステムでさえも食い物にしようとする後期資本主義という怪物をどうにか抑え込みながら、もはや骨抜きにされつつある民主主義を再起動させるために必要なユーモアの断片が本作にはちりばめられている。

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