ミラクルシティコザの映画専門家レビュー一覧

ミラクルシティコザ

沖縄・コザを舞台に日本復帰前の70年代と現代が交錯するタイムスリップ・ロックンロール・エンターテインメント。第3回未完成映画予告編大賞グランプリならびに堤幸彦賞を受賞した沖縄出身の平一紘がオリジナル脚本を書きあげ、全編沖縄ロケで撮影した。アメリカ世(アメリカ統治の時代)やベトナム戦争当時の沖縄の世相などを盛り込み、沖縄の歴史や現在と未来を描き出す。1970年に結成したロックバンド「紫」が楽曲を提供し、劇中で登場するバンドのライブ音源を新たにレコーディング。主題歌は沖縄県出身のバンド、結成20周年を迎えたORANGE RANGEが歌う「エバーグリーン」。沖縄が育んだ、三線とは違うもうひとつの音楽の魅力が存分に味わえる。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    平一紘監督、脚本では宮藤官九郎チルドレン、演出では作品の座組的にも堤幸彦チルドレンと言えるのか。そこに心が躍るわけではないが、事実上の長篇商業作品デビューでの安定感という点では、今後も日本映画界で重宝されていく予感がする。それにしても、あのコザ暴動前後の70年代のコザを完全に政治性を排除して描いているのはともかく、50代や60代でもないのに宮藤や堤の過去作にもあった、ロックという時代の役割を終えたジャンルへのロマンティシズムまで継承することはないのに。

  • 映画評論家

    北川れい子

    ロックを繋ぎにして現代と1970年代をクロスさせたのが心憎い。衰退した現代のコザと、ベトナム戦争の余波でお祭り騒ぎの賑わいがあった70年代のコザ。まさに米軍におんぶに抱っこの基地の街。けれども若者たちには解放区で、若い彼らはロックで主張する。タイムスリッブ映画として、過去の人物と名前が私にはいまいち判別がつきにくかったが、長髪でステージに立つ桐谷健太のパワフルな歌は、大いに熱い気持ちにさせる。むろんベテランのロッカーたちも聴かせて魅せる。

  • 映画文筆系フリーライター

    千浦僚

    そのハードロックのコブシは近年観た日本映画のサウンドの中でダントツにカッコよかった。沖縄コザの現在と70年代を往還し結びつけるSFファンタジー的設定も、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」み、血族の因縁などが突飛さを超え切実で好ましかった。しかしストーリー上の主題として、“思いやり予算”(←最近では同盟強靭化予算という)映画。それは沖縄への米軍駐留に不満を持つ者が悪いふうの2019年の映画「小さな恋のうた」にも近く、その誘導ぶりに爽快さは曇る。

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