我が心の香港 映画監督アン・ホイの映画専門家レビュー一覧

我が心の香港 映画監督アン・ホイ

「客途秋恨」や「女人、四十。」で知られる香港映画の巨匠アン・ホイの実像に迫るドキュメンタリー。慎ましやかな日常生活やエネルギッシュな撮影風景のほか、シルヴィア・チャンなど香港・台湾・中国映画界の重鎮たちが彼女の作品と人柄について語り尽くす。「花様年華」のアート・ディレクターなどを務めたマン・リムチョンの初監督作品。音楽は、ドラマ『あまちゃん』の大友良英。2021年大阪アジアン映画祭オープニング作品、2021年香港電影監督会新人監督賞受賞。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    生い立ちから現在までスタンダードな構成で回顧される監督の半生が、いかに自らの監督作に反映され、香港の歴史と重なり合ってきたのか。ほとんど一つの話題を語り終えるたびに彼女が見せる豪快な笑顔がとにかく印象的。喜怒哀楽を包み隠さず、主張はするが自分の意見に固執することはない監督の素直さと人間的な魅力が、自身の語りと豪華関係者たちの発言からありありと伝わってくる。本作公開を機に行われるという、日本では普段アクセスが困難な過去監督作の小特集も楽しみ。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    アン・ホイ監督の幼少期や母親との関係性から始まり、中盤は香港ニューウェーブの旗手として注目を浴びてから現在までを多彩な映画人たちを交えて語り、終盤ではもはや競う側ではなく新人監督の作品を楽しむ側になった今を捉える。そして彼女のキャリアの蓄積が、香港の歴史と緩やかに重なるという隙のない構成。ただときおり差し込まれる自作のフッテージが、自身の人生とあまりにリンクしすぎており、彼女の映画に対して一義的な見方を誘導しているのが少し気になるところ。

  • 文筆業

    八幡橙

    「女人、四十。」の主演、ジョセフィーヌ・シャオは、作中こう語る。「映画監督を神だという人も、犬だという人もいる。アン・ホイは、長らく神と犬の間でバランスを取ってきた人だ」と。「アン・ホイ監督が60歳のとき、“女に映画は撮れないとまだ思われてる”って笑いながら言ったの」とのカリーナ・ラムの発言も興味深い。神と犬の間で、女と男の間で、家族や仲間と孤独の間で、闘い続けてきたのだろうアン・ホイの、「香港のために映画を撮り続けたい」という言葉が今こそ強く響く。

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