ナチス・バスターズの映画専門家レビュー一覧

ナチス・バスターズ

第2次大戦中のソ連を舞台に、謎の狙撃兵とドイツ軍の戦いを描く戦争アクション。1941年、冬。ソ連に侵攻したドイツ軍兵士の間で、あるロシア狙撃兵がドイツ兵を次々と射殺しているという噂が広まっていた。彼らはその狙撃兵を“赤い亡霊”と呼んでいた。出演は、「セイビング・レニングラード 奇跡の脱出作戦」のアレクセイ・シェフチェンコフ。VFXは、「T-34レジェンド・オブ・ウォー」のアレクセイ・オブチニコフ、「ワールドエンド」のドミトリイ・リバコフ。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    限られた予算の中でサスペンス演出に活路を見出そうとしたのではないかと想像するが、たとえば衣装箪笥に隠れたソ連側の妊婦がいかにナチたちから逃れるのか、といった場面にも十分な緊迫感が漲っているとは言い難い。また、人物像についての謎を残しつつ同時に強さと英雄的要素を強調しようとした結果なのだろうが、ソ連側がピンチに陥るたびに突如「赤い亡霊」が画面外から一撃でナチス兵を狙撃するというパターンが何度も登場するのはさすがに工夫が足りなさすぎではないか。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    西部劇を思わせる劇伴や大胆な構図が特徴的で、キーとなる「赤い亡霊」と呼ばれる凄腕スナイパーも流れ者のように描かれている。この「赤い亡霊」は、終始謎に包まれており、最後の最後に「誰であるかは重要でない」ということが「重要なのだ」という形で正体が明かされるが、この気が利いている様で物足りない結末には少し拍子抜け。「お前は私よりひどい死に方をする」とご丁寧に張られた伏線も、ラストまで引っ張りながら普通に死んでしまうなど気になるところが多々あり。

  • 文筆業

    八幡橙

    戦車同士の接近戦で魅せるロシア版「フューリー」とも言うべき「T-34レジェンド・オブ・ウォー」がロシア娯楽活劇の隆盛を象徴する昨今なれど、やはり玉石混淆、なのか。本作の場合、何よりドラマ性の薄さが最大の難。謎のスナイパー「赤い亡霊」(原題)の正体も、女性が一人存在する意義も、彼女が突然出産する意味も、すべてがうやむやのまま、雪野原と延び切った「間」の白さだけが目に沁みる。せめて狙ったと思しきタランティーノ風会話の妙さえ、もう少し生かせていれば……。

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