スティール・レインの映画専門家レビュー一覧

スティール・レイン

韓国・北朝鮮・アメリカの首脳たちが北朝鮮の高官のクーデターによって原子力潜水艦に閉じ込められ、核戦争にも発展しうる危機に直面するサスペンス・アクション。「弁護人」のヤン・ウソク監督が自ら原作を担ったウェブコミックの映画化「鋼鉄の雨」シリーズの第2弾。主演にチョン・ウソンとクァク・ドウォンを再び起用、密室で繰り広げられる息詰まる心理戦と銃撃戦、酸素の急減と浸水の危機など、猛攻撃にさらされる人々の物語が熱く交錯する。米朝の間で調停役を担う韓国大統領ハン・ギョンジェをチョン・ウソンが演じる。目的達成のためなら無慈悲な行為も躊躇しない北朝鮮高官に扮したクァク・ドウォン、北朝鮮の最年少指導者をユ・ヨンソク、自己中心的な米大統領にアンガス・マクファーデンのほか、日本の名優・白竜なども結集。実在する各国首脳を彷彿とさせるキャラクターが揃い、リアリティとスリルが相乗する大型アクション映画となっている。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    現代を舞台にしたこの手の映画では荒唐無稽な部分とリアリティのバランスが難しいところだが、各国首脳の人間的な触れ合いを描くなら人物造型はやり過ぎるぐらいでちょうどいいという判断は当たっているように思えた。日韓の人物描写の対照性などツッコミ所は多々あれど、前任者の紋切り型のイメージをこれでもかというぐらいに誇張した米大統領や一昔前のB級映画の香り漂う副大統領、対するインテリでイケメンの北朝鮮主席と、脇を固める人物たちのキャラの立ち方は素晴らしい。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    韓国、北朝鮮、アメリカの首脳が北朝鮮護衛司令部によるクーデターで潜水艦に監禁される展開や、韓国は真面目、北朝鮮は堅苦しく、アメリカはガサツで傲慢というキャラ付けされた各国の首脳を見るに、本作は政治サスペンスでも軍事アクションものでもなく、コメディ映画なのだと思わされる。しかし笑いの場となるはずの、アメリカ大統領が通訳の苦労を無視して喋りまくるシーンや、首脳会談ならぬ下らない言い争いをする首脳たちという場面はどこも突き抜けず、中途半端な印象を残す。

  • 文筆業

    八幡橙

    ウェブトゥーン作者でもある監督が、「鋼鉄の雨」に続き自ら同シリーズを映画化。チョン・ウソンにクァク・ドウォン、同じキャストが違う役を演じる趣向は面白いが、潜水艦が主舞台の今作は、南北問題のみならず日・米・中をも複雑に絡ませすぎて、焦点がぼやぼやに。笑いの要素もなぜか一気に増量され、アメリカ大統領の密室での暴走ぶりは、まさかの『サタデー・ナイト・ライブ』状態! 妻役ヨム・ジョンアらと軽妙な掛け合いを見せるチョン・ウソンの大統領像に韓国の夢が溢れる。

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