マイスモールランドの映画専門家レビュー一覧
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脚本家、映画監督
井上淳一
ドキュメンタリーに任せっきりだった難民問題をフィクションが描く。現実を見せる前半、やはり総花的にならざるを得ないのかと危惧していると、クルド人父の難民申請却下→入管収監から一気に密度が増す。ビザがないことがひとりの少女からいかに多くを奪っていくか。少女の顔が変わっていく。ラストの強い眼差しがテロリスト誕生にも見える皮肉。嵐莉菜がいい。「東京クルド」や「牛久」を観た人も観てない人も観よ。描くべきものはそこかしこに転がっている。映画人よ、顔を上げろ。
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日本経済新聞編集委員
古賀重樹
難民申請が不認定となったため、目指す大学への進学ができず、アルバイトをクビになり、県境を流れる川の対岸の恋人にも会えない。日本で育ったクルド人女子高校生が直面する困難を通して、入管政策の不条理をあぶりだす。同時にそのアイデンティティの揺れから、この国の排他性そのものに迫る。主人公が感じるさまざまなギャップを、荒川にかかる大きな橋とコンクリートの橋げたによって視覚的に表現したのが素晴らしい。ミックスルーツの川和田監督の真情がストレートに伝わる。
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映画評論家
服部香穂里
難民問題を扱うドキュメンタリーも増加中だが、フィクションだから描けることもあるとは思う。本作では、同年代の青年との淡い恋を通し、在留資格を失う“仮放免”の心もとなさを、埼玉と東京の県境を国境さながらに見立てて映すが、その割に、気安く双方を行き来して見えるのが難。むしろ、日本語しか話せぬ妹との微妙な距離や、クルド人に誇りを抱く父の意に反し、友人にも国籍を偽ってしまう罪悪感など、主人公の家庭内に、もっと深く探究すべき要素があったのではないか。
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