ベルイマン島にての映画専門家レビュー一覧

ベルイマン島にて

巨匠イングマール・ベルイマンが暮らした島を舞台に紡ぐ、映画監督カップルの物語。ともに映画監督のクリスとトニーは創作活動にも互いの関係にも停滞感を抱き、スウェーデンのフォーレ島にやって来る。クリスは自身の初恋を投影した脚本を書き始めるが……。出演は、「ファントム・スレッド」のヴィッキー・クリープス、「海の上のピアニスト」のティム・ロス、「アリス・イン・ワンダーランド」シリーズのミア・ワシコウスカ、「パーソナル・ショッパー」のアンデルシュ・ダニエルセン・リー。監督は、「未来よ こんにちは」のミア・ハンセン=ラブ。第74回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作品。
  • 映画評論家

    上島春彦

    話が二重三重になっていて、感想以前にその構造を納得しないといけないというのは正直どうなのか。私がここで説明、という事ではなく観客が各々思考しながら鑑賞しなさい、という映画。映画内映画でメモされた(つまりフィクションとしての)住所が、映画の前提となる物語事実にふっと現れたり、想像された段階の映画から既に撮影後の映画に唐突に切り替わったり。ややこしいけど楽しめる。ただし驚きがほとんどない。驚かせるつもりがないのだ。実在する観光名所の宣伝映画である。

  • 映画執筆家

    児玉美月

    ミア・ハンセン=ラヴと実際にパートナーであったオリヴィエ・アサイヤスのカップルを模した男女の機微が繊細なニュアンスと島の風景によって揺れ動いていくのは、いかにもハンセン=ラヴの映画らしい。映画内映画が同時に綴られていき、やがてゆるやかに虚実が溶け合う様に身を預けられれば居心地がいいかもしれないが、ニュアンスに頼りすぎている節もあり、映画作家の女とスクリーンに映し出された女の視線が唐突に一致するショット以外に鮮烈な印象を覚えるショットがなかった。

  • 映画監督

    宮崎大祐

    今作でもミア・ハンセン=ラヴは、「A地点からB地点に誰かが移動し、そこで誰かと出会い、別れる。その後誰かはB地点からC地点に移動し、また誰かと出会い、別れる」という単純な運動の繰り返しをもって映画を構成している。そんな反復に毎度わたしが惹きつけられるのは、これこそが映画であり、世界であるのだという監督の確信が伝わってくるからであろう。単純だったはずの運動は国境も言語も虚実も超越し、いつのまにか世界のすみずみまで根を伸ばし、響き渡る。

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